理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-YB-01-1
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口述演題
高次生活機能における軽度認知機能低下高齢者と健常高齢者の比較
主観的困難感に着目して
襖田 桃子安齋 紗保理佐々 直紀植田 拓也山上 徹也柴 吉崇
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キーワード: MCI, IADL, 軽度認知障害
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抄録

【はじめに,目的】認知症高齢者の増加が社会問題となり,これに伴い日常生活が困難な要介護者増加が報告されている(長谷川,1999)。認知症の前段階にある軽度認知機能低下者(以下,MCI:Mild Cognitive Impairment)を早期にスクリーニングし,認知症の発症を予防することが喫緊の課題といえる。MCIのスクリーニングには様々なものが使用されているが,精神的・身体的負担が大きい。また,対象者が地域で生活しているという事を考慮すると,生活機能の障害の有無による判別が注目されている。先行研究ではMCI高齢者と健常者の判別に有用な質問項目の抽出が検討されており,記憶障害はMCIから気づかれ易いが,IADLの低下はごく軽度アルツハイマー型認知症以降顕在化すると報告されている(植田,2008)。そこで,MCIは生活機能が障害される前に,主観的な困難感が現れるのではないかと考えた。本研究ではMCI高齢者と健常高齢者に対して高次生活機能の障害有無およびその主観的困難感を比較し,早期にMCIを発見できる可能性を検討する。【方法】対象はA県B市在住の認知症の確定診断がなされている者,要支援・要介護者を除く65歳以上の高齢者117名で,B市の広報誌と基本チェックリストの返送により募集した。除外基準は認知症(タッチパネル式認知機能評価(以下,TDASプログラム:Touch Panel-type Dementia Assessment Scale)で14点以上),うつ症状(Geriatric Depression Scaleで5点以上),脳血管障害による片麻痺・高次機能障害,著しい視聴覚障害でコミュニケーションに支障がある場合とした。調査は郵送自記式アンケートと会場での自記式アンケートとTDASプログラムを実施した。調査項目は基本属性,高次の生活機能(老研式活動能力指標,薬の管理),高次の生活機能の主観的困難感(5年前と同様,5年前より少し大変,5年前よりかなり大変),TDASプログラムである。分析方法はTADSプログラム6点以下を健常群,7~13点をMCI群とし2群間における生活機能の主観的困難感の出現頻度の差を質問項目ごとにχ二乗検定を行った。【結果】健常群47名,MCI群15名の計62名(男性:18名,女性:44名)を選定し,MCIの出現頻度は母集団の11.3%,基本属性に有意差は認めなかった。除外者は,認知症12名,うつ症状43名であった。老研式活動能力指標の各項目と薬の管理の項目に「はい」と回答した割合の各群間の比較では,有意差は認められなかった。また,「はい」と回答した項目の主観的困難感を分析したところ,老研式活動能力指標の「自分で食事の用意ができますか」の項目では,健常群4名(8.5%)に比べMCI群は5名(33.3%),また「自分の薬を管理できますか」の項目は,健常群2名(4.3%)に対し,MCI群4名(26.7%)といずれも5年前より困難と感じる者が多かった。【結論】高次な生活機能おいて,健常群とMCI群で行うことに関して差は見られなかったが,MCI群の方が5年前より主観的困難感を認める質問項目を抽出した。

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© 2016 日本理学療法士協会
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