理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-09-2
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パーキンソン病患者における歩行自立度とFour Square Step Testに関する検討
山本 裕子来住野 健二井上 優紀木山 厚八重田 淳中山 恭秀佐藤 信一
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抄録

【はじめに,目的】パーキンソン病(以下PD)患者の歩行能力は疾患の進行に伴い生じる姿勢反射障害やすくみ足などの症状により低下する。姿勢反射障害は投薬効果が得られにくいため,近年の報告では歩行能力に着目した運動療法の必要性が示されており,理学療法診療ガイドラインでは,評価指標としてTimed Up and Go test(以下TUG)や最大歩行速度などを推奨している。しかしPD患者は方向転換が難しく,歩行が可能であっても立ち上がりが困難であるといったように,動作の難易度が他疾患と異なることを経験する。そのため歩行能力を判定する評価指標として十分でない可能性がある。そこで,Four Square Step Test(以下FSST)がまたぎ動作や前後左右への重心移動などPD患者の姿勢反射障害や歩行能力をより反映した評価指標のひとつである可能性を考え,本研究ではPD患者を対象に歩行自立度に関連する因子を検討し,FSSTの有用性を検証した。【方法】対象は当院に投薬調整および精査目的で入院し,理学療法処方のあったPD患者53例(男性26例,年齢73±8歳,罹患期間23±34ヶ月,H&YstageI:23名,II:11名,III:18名,IV:1名)とした。測定項目はUPDRSのpart3,FSST,最大歩行速度,TUGとした(FSST,最大歩行速度,TUGは2回ずつ測定し平均を求めた)。また,歩行自立度は自立群(屋外・院内・PT室内自立:26例)と非自立群(監視:27例)の2群に分けた。本研究では,これら歩行自立度と上記測定項目についての平均の差をt検定,Mann-WhitneyのU検定を用いて行った。また,有意な差が示された項目と歩行自立度についてROC曲線を用いて歩行自立度のCut off値,曲線下面積を算出した。なお有意確率は5%とした。【結果】FSSTは自立群で10.7±3秒,非自立群で15.4±4.9秒,TUGは自立群で10.1±4秒,非自立群で14.4±7秒で有意差を認めた。UPDRSPart3は自立群で37.6±6.7点,非自立群で10.7±10点,最大歩行速度は自立群で1.2±0.3m/s非自立群で1.0±0.4m/sと有意差を認めなかった。歩行自立におけるTUGのCutoff値は11.2秒(感度70%,特異度78%,AUC74%),FSSTは14.2秒(感度63%,特異度92%,AUC80%)であった。【結論】本研究の結果より,歩行自立度を判定する際には,最大歩行速度やTUGに加え,FSSTは有効な指標となりえる可能性が示され,TUGとFSSTの感度と特異度の違いから,評価している視点が異なる可能性があると考える。また,歩行自立度と歩行速度との間に有意差を認めなかったことは,PD患者では加速歩行など様々な症状を呈するため,歩行速度が速いことが,一概に良い結果を示しているとは言えないためと考える。理学療法診療ガイドラインや先行研究では最大歩行速度やTUGなどの評価項目が推奨されているが,今後はFSSTの妥当性と信頼性について非運動症状などの他の要因を含め多角的に検討する必要性がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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