理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-13-6
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口述演題
早期投薬治療を開始した初期リウマチ患者に対するリハ介入についての検討
輿 日登美
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抄録

【はじめに,目的】リハビリテーション(以下リハ)は関節リウマチ(以下RA)治療の4本柱の1つと言われており,病期にかかわらず疼痛軽減や変形・拘縮・筋力低下予防や改善,環境調整等の介入を行うことが重要であると言われている。一方で,生物学的製剤の承認以降,薬物療法の発展に伴い,RAは「治療可能な疾患」になりつつあり,リハも一変することとなった。2010年のリウマチ白書によると,リハビリを受けるRA患者の割合は2005年に比して10%程度減少し,リハの必要を感じない患者は4割程度に達している。本研究では,発症早期に投薬治療を開始したRA患者のADL,上肢機能の評価を行い,初期RA患者に対して介入すべき問題点を検討した。【方法】自由が丘整形外科に通院するRA患者で,研究参加に同意を得られた607名を対象とした。精神疾患,神経疾患,神経症状を伴う整形疾患を有する者は対象から除外した。方法は,m-HAQ(modified Health Assessment Questionnaire),Q-DASH(Disability of the Arm, Shoulder, and Hand),DAS28(Disease Activity Score 28),患者VAS,上肢の関節可動域制限を有する関節数について評価を行った。発症から6か月以内に抗リウマチ薬(DMARDs)と生物学的製剤のいずれかを現在まで継続的に投薬されている124名を早期投薬開始群として,全対象患者との比較を行った。更に早期投薬開始群の中から発症2年以内の初期RA患者50名に対して早期投薬開始群で発症2年以降の患者群との比較を同様に行った。【結果】RA発症6ヶ月以内に投薬を開始した患者は,全対象患者と比較してm-HAQの点数は,有意に低値であったが(p<0.05),Q-DASH,DAS28,本人VAS,上肢の関節可動域制限を有する関節数には有意差は認めなかった。RA発症6ヶ月以内に投薬を開始した患者のm-HAQは,Q-DASH,DAS28,患者VAS,上肢の関節可動域制限を有する関節数の全てと相関を認め,中でもQ-DASHの構成項目の中で「腕・肩・手の影響により家族や仲間との正常な生活を送ること」においては,高い相関を認めた。(r=0.7)RA発症6ヶ月以内に投薬を開始し,発症2年以内の患者のQ-DASH(仕事)は,発症6ヶ月以内に投薬し,発症2年以降の患者に比較して有意に高値であり(p<0.05),Q-DASHの構成項目の中で,「重労働の家事をする」(r=0.88),「腕・肩・手の影響により家族や仲間との正常な生活を送ること」(r=0.78),痛みに関する3項目(r=0.79)において高い相関を認めた。【結論】投薬治療の発展に伴い,RA患者のADL低下は予防できるようになった一方,初期RA患者は早期に投薬開始しても,質・量ともに仕事の制限を感じていると考えられた。家事や職場の環境にリハ介入することにより,周囲との関係悪化や疼痛を軽減する可能性がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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