理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-06
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ポスター発表
変形性膝関節症における加速度計を用いて動作解析を行う意義
HTO患者と健常人との比較
出口 直樹山崎 登志也平川 善之原 道也
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抄録

【はじめに、目的】変形性膝関節症(膝OA)は現在2,530万人とされ,発症や進行による疼痛増加や機能障害をきたすことで,転倒や廃用症候群を招くことが問題とされ予防は重要である.悪化要因の1つとして膝の外側動揺が挙げられているため動作解析により膝OAの歩行の特徴を明らかにすることで予防や進行につながる可能性がある.しかし,動作解析には床反力計や三次元動作解析装置が使用されているが,装置は高価で操作や解析処理が複雑であり測定環境も限定されるため,コストや利便性の面からも小型加速度計が近年用いられている.本研究の目的は小型加速度計を用いて膝OA,高位骨切り術患者(HTO),健常者の歩行の特徴を明らかにし臨床応用が有用であるか明らかにすることである.【方法】研究デザインは,ケース・コントロール研究とし測定期間は,2012年6月~11月であった.対象は,当院に入院し2010年2月~2011年9月にHTOを施行し1年以上経過(術後18.1±6.4ヵ月:12-32ヵ月)した患者(HTO群)13名16膝(男性2名3膝,女性11名13膝,年齢(±SD)63.9±6.3歳:58-79,BMI24.6±3.0:22.0-32.0;FTA171.5±2.3度)であった.膝OA患者は,両脚立位時の膝の前後X線撮影で,膝OAと診断があるもので,歩行が自立している者とし,荷重時痛を認め,両膝に手術既往がない患者(膝OA群)10名13膝(男性2名2膝,女性8名,11膝,年齢60.9±7.2歳:52-73,BMI26.3±3.0:20.2-29.7,K/L Grade2:6膝、3:7膝;FTA179.2±1.2度)であった.対照群は,50歳以上で病院受診しており膝OAを有してない者,病院入院患者の付き添いおよび家族,研究者の家族の知人・友人関係11名22膝(男性4名,8膝,女性7名,14膝,年齢62.3±8.0歳;58-69,BMI25.8±2.3;17.3-28.2)でこれまで膝関節で病院受診をしたことがなく膝の疼痛を有さない者とした.方法は,歩行評価の測定課題は裸足での10m区間の自由歩行とした.加速度計測は測定前に30秒間のキャリブレーションを行った.3 軸加速度計(MA3-04Ac マイクロストーン社製)を腓骨頭直下(膝部),足関節外果直上(足部)に10年以上経験がある理学療法士が貼付し,加速度波形をサンプリング周波数は100Hzにて導出した.歩行の加速や減速の影響を考慮し,各試行中の6歩,8歩,10歩目から得られた加速度波形を分析した.測定は各歩行条件で2回行い計6歩行周期の踵接地より外側に最大振幅を算出した値をキャリブレーションした値から除したものを最大外側加速度(ZLAV)とした.また,踵接地からの外内側の最大側方加速度の変化量(加速度変化量)を絶対値にて算出し,この間の峰性数も記録した.統計解析としてHTO群,膝OA群,健常群のZLAN,加速度変化量,峰性数の比較を一元配置分散分析にて検討し,多重比較検定にはFisherのPLSD法を用い,有意水準を5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】被検者には研究の目的を十分に説明し,書面にて同意を得た。また,本研究は福岡リハビリテーション病院の倫理委員会より承諾を得て行った.【結果】3群間のベースラインでは,膝OA群と対照群のBMI(p=0.483)およびHTO群のFTA(p=0.000)で有意差を認めた.ZLAVはHTO群0.2±8.2m/s2(17.5-13.2),OA群9.6±3.1m/s2(5.9-16.0),対象群は,13.0±4.2m/s2(3.3-19.9)であった.3群間のZLAVの比較では,HTO群はOA群(p=0.000)および対象群(p=0.000)より小さく,膝OA群と健常群は,膝OA群が小さかった(p=0.041).加速度変化量はHTO群16.9±7.0m/s2(3.0-43.1),OA群13.9±5.3m/s2(7.4-35.4),対照群は,20.9±6.5m/s2(3.5-37.5)であった.3群間の加速度変化量は,OA群はHTO群(p=0.002)および対照群(p=0.000)より小さく,HTO群と健常群では,膝OA群が有意に小さかった(p=0.000).峰性数は,HTO群1.2±0.3峰性,OA群1.2±0.3峰性,健常群1.2±0.2峰性であり,3群間に有意な差を認めなかった(p=0.843).【考察】加速度計は,方法論や解析方法の使用課題は多いとされ,膝OAの動作解析を行っている先行研究で,外側の加速度が着目されている.本研究では,HTO群,膝OA群,対照群において峰性数に差を認めないが,ZLAVおよび加速度変化量は異なった波形を示し対照群が大きかった.しかしながら,HTO群とOA群の比較では,外側最大加速度ではOA群が大きいが,加速度変化量では小さいという特徴が観察された.HTO群は膝OA群と比較し,FTAの角度は小さくZLAVおよび加速度変化量が大きいと思われたが,測定する範囲により異なり,波形を観察する際にはZLAVだけではなく波形全体に目をむける必要があるかもしれない.【理学療法学研究としての意義】小型加速度計を使用し,対照者と比較にて膝OAにおける特徴的な波形を明らかにすることが可能であり臨床応用が有用であるが,動作解析をする際,外側側方への解析だけに着目するではなく,波形全体を観察することの必要性を示せたことが本研究の理学療法意義である.

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© 2013 日本理学療法士協会
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