理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-34
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ポスター発表
人工股関節置換術後症例における入院中の活動量と身体機能の変化
本田 貴博佐藤 丈才佐藤 滋外川 諒
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抄録

【はじめに、目的】人工股関節置換術(以下,THA)施行患者に対する歩行訓練は,身体機能改善,廃用症候群予防,体力維持,下肢筋力向上のために重要であるが,入院患者の歩行量および身体活動量は非常に少ないことが指摘されている。病院内では転倒予防や治療および安静のためにむしろ制限され,病室で臥床している場合も多い。入院中の歩行能力などの身体機能の改善には,身体活動量の向上が必要である。今回,THA施行患者を対象として,入院中の活動量をライフコーダを使用して調査し,手術後の変化とその特徴や関連についても検討を行った。【方法】THA後患者に対して,手術後約1週間後,2週間後,3週間後,4週間後に1日づつ,朝~就寝までライフコーダを患側腰付近に装着し,記録した。その日の活動量や身体活動内容を,活動記録表に記載した。手術後4週間後に,身体指標の計測を行った。計測した項目は,年齢,性別,身長,体重,BMI,罹患期間,歩行開始日,歩行自立までの期間,入院期間,術後在院期間, Barthel Index,VAS(Visual Analog Scale),最大10m歩行速度,Timed up & Go,関節可動域(両側,股関節屈曲・外転・伸展,膝関節屈曲・伸展),最大膝伸展筋力,大腿周径(両側膝蓋骨上縁0・5・10cm),片脚立位(両側)。またカルテより,手術後4週間までの1週間ごとのC反応性蛋白(以下,CRP)を調査した。統計解析には、統計解析用ソフトPASW Statistics18を用い,有意水準を5%未満とした。各指標の相関関係を見るためにSpearmanの順位相関を,活動量の変化をFriedman-Test,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した。【倫理的配慮、説明と同意】当大学倫理委員会の承認を得ており(倫理委員会受付番号H22-57),ヘルシンキ宣言に基づき,本研究への参加は被験者本人の自由意思とし,研究内容を書面にて説明し,同意を得た。【結果】THA患者の活動量(活動カロリー)は,1週間後が240.5±72.4Kcal,2週間後が305.5±91.4Kcal,3週間後が307.0±74.9Kcal,4週間後が324.9±103.3Kcalであり,1週間後と2週間後の間で有意な増加を認めた(p<0.01)。総カロリー(基礎代謝+活動量)の平均は,1週間後が1471.8±233.5Kcal,2週間後が1533.6±234.6Kcal,3週間後が1548.9±248.0Kcal,4週間後が1569.5±277.2Kcalであり,1週間後と2週間後の間で有意な増加を認めた(p<0.01)。歩数の変化は,1週間後が172.8±344.8歩,2週間後が663.3±870.6歩,3週間後が1383.1±1552.6歩,4週間後が1985.9±2426.0歩であり,1週間後と2週間後,2週間後と3週間後,3週間後と4週間後の間でそれぞれ有意な増加を認めた(p<0.01)。4週間後の歩数に注目して,各身体指標との関係性を調べたところ,術後入院期間との間に中等度の負の相関を(r=-0.623), BIとの間に強い正の相関を(r=0.783),10m歩行速度との間に強い負の相関を(r=-0.749),術側片脚立位との間に中等度の正の相関を(r=0.685),非術側片脚立位との間に中等度の正の相関を(r=0.646),Timed up & Goとの間に強い負の相関を(r=-0.720),術側膝伸展筋力のトルク体重比との間に中等度の正の相関を(r=0.691),非術側膝伸展筋力のトルク体重比との間に中等度の正の相関を(r=0.519)を認めた。【考察】ライフコーダの計測結果では,1週間後と2週間後の間で活動カロリーや総カロリー,歩数など活動量の有意な増加を認めている。術後2週間前後に多くの患者が,歩行器やT字杖などを用いて病棟内歩行を行うようになっていることが考えられ,そのため臥床時間が減り,活動量が増えていると考えられる。特に歩数の結果を見ると,1週間後から2週間後で約3倍に,2週間後から3週間後でさらに2倍に歩数が増加している。2週間後から3週間後の活動カロリーの増加がそれほど顕著でないことから,2週間後から3週間後の間に,ベッド上での筋力トレーニング中心の運動から,歩行中心へとリハビリテーションが変化していっていることが考えられる。ただ,今回の調査結果では,ADLがほぼ自立していた手術後4週間の状態でも,1日の歩数は平均約2000歩程度であり,明らかに歩行量が少なく,入院期間が長くなるほど,それだけで廃用性筋力低下を引き起こしかねない。また,CRPは2週間後と3週間後の間で有意な低下を示しており,逆に歩数は2週間後と3週間後の間で有意に増加していた。手術後2~3週間前後で患部の腫脹が減少する傾向にあり,その頃から夜間痛や歩行時痛がなくなってきたという訴えが多く,活動量の増加に炎症反応の減退が影響している可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】入院中の関節疾患術後の活動量や調査した報告は少なく,これを明らかにすることが下肢関節疾患のリハビリテーションを行っていくうえで,患者に対する動機づけになる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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