理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-04
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ポスター発表
腹横筋エクササイズ継続による身体機能変化
布施 陽子福井 勉
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抄録

【目的】我々は妊婦を対象とした理学療法を検討し、幾つかの実験研究も行ってきた。女性は妊娠によって様々な身体的変化を生じるが、身体的愁訴として腰痛,尿失禁などのマイナートラブルが問題視されている。妊婦は腹部が前方へ突出するに従いsway-back姿勢となり易く、それに伴い骨盤帯機能が破綻し腰痛や尿失禁を生じてしまう可能性があると考えられる。骨盤帯機能を再構築するための方法のひとつに腹横筋エクササイズがあり、従来検討を繰り返してきた(2009,2010,2011布施)。上記のように、横断的研究は散見されるが、縦断研究はほとんどみられない。そこで本研究に置いては非妊娠女性を対象とし、上記エクササイズ(以下、EX)の継続が身体機能にどのような影響を与えるかについて縦断的に検討したので報告する。【方法】対象者は健常成人女性10名(平均年齢19.6±1.4歳,身長=160.4±7.6cm, 体重=53.3±10.4kg, BMI=20.6±2.4)の非妊娠女性とした。対象者に対し、1.超音波診断装置による視覚的フィードバックを用いた腹横筋収縮学習、2.ストレッチポール上背臥位1分間(第44回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証)、3.ストレッチポール上背臥位でのu・oの発声10秒間10回(第46回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証)、4.ストレッチポール上背臥位での上肢課題運動を10回(第45回日本理学療法学術大会により上肢外転側と反対側の腹横筋EXとして有効であると立証したものであり、左右の回数については個々に評価した上で比率を検討し実施)の4種類の介入を各被験者において約30分個別的に実施した。その後、2から4までの課題を紙面上に説明した資料を渡し、各自ホームエクササイズとして毎日実施するよう促した。計測項目は、1)骨盤周囲径、2)側腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚、3)脊柱弯曲アライメント(胸椎後弯,腰椎前弯)の3項目とし、それぞれメジャー、超音波診断装置(HITACHI Mylab Five)、脊柱計測分析器Spinal Mouse(SPM-3.2)を用いて計測した。また、計測肢位は安静立位とした。1)は恥骨結合下縁上を通る周囲径を3回計測した結果の平均値を使用した。2)はわれわれの先行研究で高い信頼性が得られた位置である、上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側1/3点を通る床と垂直な直線上で、肋骨下縁と腸骨稜間の中点にプローブを当てて、腹筋層筋膜が最も明瞭で平行線となるまで押した際の画像を静止画として記録した。記録した超音波静止画像上の筋厚は、筋膜の境界線を基準に左右それぞれについてScion Imageにて計測した。3)は第7頚椎から第3仙椎までの棘突起を計測し、胸椎後弯角と腰椎前弯角を算出し、分析には3回計測した結果の平均値を使用した。以上3項目を、介入前,介入後,1週間後,2週間後,3週間後の5回計測した。統計的解析はSPSS ver18を使用し、反復測定による一元配置分散分析と事後検定としてTukey法を実施し、有意水準1%未満で検討した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は文京学院大学倫理委員会の承認(承認番号:2012-29)を得た上で、被験者に対して事前に研究趣旨について十分に説明した後、書面での同意を得て実施した。【結果】1.1)骨盤周囲径、2)側腹筋群中の腹横筋厚のみ、3)脊柱弯曲アライメント(胸椎後弯,腰椎前弯)に違いを認めた(p<0.01)。2.2)側腹筋群中の腹横筋厚について、介入前,介入後,1週間後,2週間後,3週間後それぞれについて違いを認め、筋厚値は有意に増加した(p<0.01)。3.3)脊柱弯曲アライメントについて、腰椎前弯角のみ介入前・介入後・1週間後・2週間後・3週間後それぞれについて違いを認め、計測値は有意に減少した(p<0.01)。4.2)側腹筋群中の外腹斜筋厚,内腹斜筋厚については、違いを認めなかった(p=0.41,p=0.17)。【考察】本研究では、骨盤周囲径、腹横筋厚、脊柱弯曲アライメントにおいて我々が先行研究にて立証してきたEXによる身体機能変化を認めた。また、計測項目の中でも計測ごとに腹横筋厚は増加し、腰椎前弯角は減少した。腹横筋は体幹深層筋群の1つであり、姿勢保持作用・腹腔内圧調整作用を持つと言われている。そのため、立位姿勢を保持するとき、腹横筋機能が向上することで背部筋群の活動が抑制され腰椎前弯角が減少したと考えられる。また、腹横筋の活動が腹腔内圧を上昇させ、骨盤周囲径に変化を与えたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究結果から骨盤帯機能を再構築する方法として本研究でのEXが有効であることが示された。今後、妊娠により骨盤帯機能破綻を生じた女性に行う評価・治療の一助になると考えられる。周径については恥骨結合下縁上を通る周囲径としており、妊婦への評価項目として妥当であると考えられる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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