理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-11
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ポスター発表
急性期脳梗塞患者のNIHSSと歩行練習開始時期の関係について
大塚 渉緒方 孝泉 清徳井手 睦
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キーワード: 脳梗塞, NIHSS, 歩行
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抄録

【はじめに、目的】急性期脳梗塞患者の歩行練習の開始時期については、座位練習が開始されると同時につねに念頭におき、座位や立位が完成するのを待たずに、その可能性が見いだされたら並行して練習を進めるのがよいとされている。また、活動制限レベルの予後予測では、歩行障害の回復度は最初の1ヵ月間が最も大きいとされており、急性期脳梗塞患者の理学療法においては、安静度に応じて早期に離床し、速やかに基本動作・歩行練習を開始しなければならない。松山は「早期に歩行訓練を開始することは、最終的には、入院期間の短縮につながるものである」と述べている。急性期脳梗塞患者に理学療法士が歩行練習を導入するまでの期間には発症早期の重症度が関与していると推測している。本研究の目的は、脳梗塞患者が入院し理学療法(以下PT)を開始して歩行練習導入までの期間を調査し、リハビリ開始時の重症度と歩行練習導入までの期間に関係があるかを検討することにある。検討結果より臨床的にも歩行練習導入時期の指標になることが期待される。脳梗塞の重症度には脳卒中重症度評価スケールのひとつであるNational Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS)を用いた。【対象】平成24年1月から3月に当院脳血管内科に入院し、PTを実施した脳梗塞症例(発症前歩行自立)73例(男性41例・女性32例、平均年齢75.9±11.3歳)を対象とした。右片麻痺23例・左片麻痺32例・麻痺無し18例。病型別は、アテローム血栓性17例・心原性29例・ラクナ12例・不明15例であった。【方法】診療録を基に性別、年齢、発症日、入院日、PT開始日、PT開始時・終了時のNIHSSスコア、歩行練習開始日、歩行練習開始時の高次脳機能障害(失語・失行・失認)の有無、PT終了時のFunctional Independence Measure(以下FIM)、転帰先について後方視的に調査・検討した。高次脳機能障害については、スクリーニングテストおよびADL場面での分析により評価した。統計処理にはSpearmanの順位相関係数とMann WhitneyのU検定を用い、統計学的有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮】本研究における個人情報の取り扱いについては当院倫理委員会の規定に従い行った。【結果】入院日からPT開始日までの期間は平均2.4±1.2日。歩行練習実施群66例(90.4%)・歩行練習非実施群7例(9.6%)、PT開始日から歩行練習開始日までの期間は平均5.3±5.0日。PT実施期間は平均26.0±15.2日・在院日数は平均29.3±12.7日。転帰先は自宅退院30例・回復期リハ病棟37例・療養病棟3例・死亡3例であった。PT開始時のNIHSSスコアとPTを開始して歩行練習を導入するまでの期間には正の相関を認めた(r=0.612、p<0.01)。PT開始時のNIHSSスコアとPT終了時のFIMには負の相関を認めた。(r=0.809 p<0.01)。高次脳機能障害あり群(18例)の歩行練習開始までの期間は7.8日±7.0日・高次脳機能障害なし群(48例)の歩行練習開始までの期間は4.4±3.5日で高次脳機能障害の有無で歩行練習開始までの期間に有意差は認められなかった。また性別・麻痺側でも有意差は認められなかった。【考察】PT開始時のNIHSSスコアとPTを開始して歩行練習を導入するまでの期間には正の相関があることから、重症例ほど歩行練習開始が遅くなることが明らかとなった。また、高次脳機能障害の有無で歩行練習開始までの期間に有意差は認められなかったが、高次脳機能障害があることで歩行練習開始の時期が遅くなる傾向があった。今後は更に病型別やNIHSSの重症度分類などで歩行練習までの期間を比較検討していくことでより具体的な期間が導き出せるのではないかと考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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