理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI2-106
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ポスター発表(一般)
立位骨盤回旋運動の動作解析
振り向き動作における足部回外運動の影響
長岡 洋平勝平 純司丸山 仁司
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抄録

【目的】
立位での骨盤回旋運動は両下肢関節の3軸運動によって構成されている。何らかの要因で機能的な下肢運動が破綻すると,骨盤回旋量の個人差や左右差,また円滑な身体回旋動作がみられなくなる。振り向き動作は,水平面運動連鎖の分析として有用であり,その動作特性として体幹部から足部までの協調した運動機能が求められる。対象者に振り向き動作を施行し,回旋側の足部回外運動を制限すると,骨盤回旋量が大きく減少することを経験する。また,変形性股関節症では,回旋側の足部を過回外運動することで疼痛緩和や骨盤回旋量の増大を図る者が多い。このように,振り向き動作における足部運動は,骨盤回旋量の増減に関与し,さらに身体機能不全を代償・補償する機能も担っているといえる。
そこで本研究では,振り向き動作時の回旋側における足部条件の違いが骨盤回旋量や動作制御にどのような影響を与えるかについて検討した。
【方法】
対象は整形外科的疾病を有さない健常成人男性11名(年齢:25.0±3.9歳,身長:174.8±4.2cm,体重:69.3±4.7kg)とした。測定課題は立位振り向き動作とし,対象者には3秒間で身体全体を時計回りに90°回旋させた。課題施行時の足部条件は,振り向き動作に伴う足部運動を拘束した足底接地条件と,動作時の回旋側の足部回外運動を許容した足部回外条件の2条件で行った。各課題とも計測前にオリエンテーションと動作練習を行い,実際の計測ではそれぞれランダムにて5回ずつ行った。
計測は赤外線カメラ10台によって構成される3次元動作解析装置Vicon Mx(Vicon社)と床反力計(AMTI社)2枚を使用し,マーカーは骨盤,下肢,頭部,胸郭,上肢など計40個所に貼付した。測定項目は骨盤,両下肢関節の3軸方向全ての運動角度とし,骨盤運動は骨盤に貼付したマーカーよりセグメント定義した後,計測室に固定された絶対空間座標軸周りで,オイラー角(XYZの回転順)を用いて角度を算出した。また,計測した床反力データから足圧中心座標を求め,下肢関節モーメントは逆動力学的分析により算出した。なお,振り向き動作の1施行は体幹の右回旋運動の開始から運動終了までの区間を100%として正規化し,2条件間の差異について分析した。
統計処理は,足部2条件間における比較には対応のあるt検定を行い,有意水準は危険率5%未満とした。
【説明と同意】
対象者に本研究の趣旨を説明し,書面にて同意を得た。
【結果】
骨盤最大回旋量の平均値は足底接地条件で48.0±12.8°,足部回外条件で60.4°±8.2°であり,条件間に有意差を認めた。足圧中心軌跡は,足底接地条件よりも足部回外条件で有意に回旋側である右側方へ移動した。また,左右それぞれの足圧中心も同様に足部回外条件で有意に右側方へ移動していた。
関節モーメントは足底接地条件よりも足部回外条件で有意に左股外転・左膝外反モーメント減少,右膝外反モーメント増大を認め,両関節の前額面上の相反性が著明となった。また,回旋側の足関節まわりにおいては足底接地条件よりも足部回外条件で右足外反モーメントが動作終了に向けて有意に減少を示した。
【考察】
振り向き動作は,体幹・骨盤の回旋運動が床と接地している足部へと連鎖する動作である。足部回外条件の回旋側足関節まわりでは右足圧中心の外側移動と同時に外反モーメントの減少が生じた。これは,骨盤からの回旋運動に対して,足部まで回旋連鎖が生じていたためと考えられ,足部回外条件での骨盤回旋量増大に影響を与えていたと考える。一方で,足底接地条件での回旋側の足外反モーメント増大は,足部回外条件とは対照的に身体の回旋力を制動する役割であったと考える。
また,足部回外条件では,前額面上における股・膝関節モーメントの相反性がより著明となった。足圧中心の回旋側移動も同時に認められたことから,足部回外条件では振り向き側下肢の荷重量が増大したと考える。そのため,足部回外運動を伴う振り向き動作では,股・膝関節による前額面上制御により,回旋側下肢へと身体重心を移動させながら,より大きな身体回旋運動が遂行されていたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果より,振り向き動作の回旋側における足部運動性は骨盤回旋量の増減に影響を与えることが示唆された。また,協調して生じる前額面上の股・膝関節の相反作用も水平面上動作制御に関与していたことから,振り向き動作は回旋側を主とした水平面上運動連鎖の分析に加え,前額面上の下肢関節機能にも着目して臨床応用していくことが重要であると考える。

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© 2011 日本理学療法士協会
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