理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-573
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教育・管理系理学療法
客観的臨床能力試験(OSCE)を応用した実習前教育の紹介
福山 勝彦細木 一成鈴木 学木村 哲彦二瓶 隆一
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抄録

【目的】臨床実習において「学内では問題にならなかった学生が現場で適応できない」というケースを時々経験する.また当校では一部の病院においてクリニカルクラークシップ形式の実習をお願いしているが、実際にどの程度の臨床能力があるかについて事前に評価していない.このような問題を解決するために昨年度より、客観的臨床能力試験(OSCE)を応用した実習前教育(OSCEモイドと名づけている)を取り入れた.今回はこの方法を紹介し、臨床実習終了後に学生にアンケートを行なったのでその結果を報告する.
【方法】当校では評価実習の1ヶ月前にOSCEモイドを試験(Examination)としてではなく練習(Exercise)として実施している.課題は片麻痺と人工股関節置換術後の症例で、それぞれ一つのステーションで問診から検査、治療手技まで数項目を実施する.標準模擬患者役は全総合臨床実習を終了した4年生の学生、チェック・指導役も同じく全総合臨床実習を終了した4年生の学生と教員の3名で行い、事前にこれらの学生には患者役の仕方、チェック項目等を説明、教員指導の下、十分練習を行なわせる.最大の特徴はOSCEモイド終了直後、チェック表に従ってその場でフィードバックすることである.今回、評価実習を終了した学生(対象者)43名に対し、OSCEモイドの効果について無記名のアンケート調査を行なった.それぞれ肯定的か否定的かを4段階(4が肯定、1が否定)で回答し、それぞれにコメント欄を設けた.なお学生(対象者)にはアンケート調査の趣旨を説明し同意を得ている.
【結果】自分に欠けている点が明確になったか」に対し、4が26名(60.5%)、3が13名(30.2%)、2が4名(9.3%)であった.「フィードバックは適切だったか」に対し、4が20名(46.5%)、3が14名(32.6)、2が9名(20.9%)、であった.「不足していた部分を実習前に自己学習したか」に対し、4が19名(44.2%)、3が17名((39.5%)、2が7名(16.3)であった.「OSCEモイドは実習で役立ったか」に対し、4が23名(53.5%)、3が11名(25.6%)、2が8名(18.6)、1が1名(2.3%)であった.
【考察】OSCEの問題点の一つにフィードバックが十分行なえないということが指摘されている.試験として行なった場合、その場で指摘されることは少なく、後日結果を知らされることが多い.我々の方法ではその場でフィードバックされるので、指摘された点を受け入れやすく、不十分な点や自分で気づいていなかった点を把握し次の準備にもつながったものと思われる.また学生に協力してもらうことで一人に十分時間を取れることもメリットと言える.しかしフィードバックの内容に関しては学生が行なうことに若干不満もあり、チェック項目の徹底指導や教員主体のフィードバックを検討する必要があると思われる.さらに実習指導者の意見も取り入れ効果を検証していきたい.

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© 2009 日本理学療法士協会
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