理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-308
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神経系理学療法
NIHSSを用いた早期予後予測による早期転帰予測の可能性
上野 貴大堀切 康平松谷 実榎本 陽介菊池 隼齊藤 理恵塚田 陽一強瀬 敏正荻野 雅史野内 宏之本多 良彦高松 浩
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抄録

【目的】近年、医療制度上の後押しを受け医療施設の機能分化が進んでいる.その中で、脳卒中急性期病院では早期転帰予測による適切な転帰先の検討が求められている.先行研究よりADL予後予測における、modified NIH Stroke Scale(以下NIHSS)による脳卒中重症度分類の有用性は周知のことである.今回、初期NIHSSと退院時日常生活機能評価(厚生労働省規定)との関係性から、より実用的な転帰予測の可能性について検討したので報告する.
【方法】対象は平成20年8月1日から平成20年9月30日までに当院入院し、リハビリテーションが開始された脳卒中患者37例(男性24名、女性13名、平均年齢66.4±29.4歳)とした.各例について、初期介入時にNIHSSを評価し、軽症例(NIHSS score≦6)、中等度例(7≦NIHSS score≦14)、重症例(15≦NIHSS score)の3群に分類し、各群における退院時日常生活機能評価及び転帰先の調査を行った.
【結果】初期NIHSSによる重症度分類と各群における退院時日常生活機能評価得点平均は、軽症例(23例)1.52pt、中等度例(7例)6.57pt、重症例(7例)12.14ptであった.各群の転帰先は、軽症例では自宅退院13例、転院5例、未退院5例であった.中等度例では自宅退院0例、転院4例、未退院3例であった.重症例では自宅退院1例、転院3例、未退院1例、死亡2例であった.
【考察】結果より、初期NIHSSによる重症度分類と退院時日常生活機能評価との間には関係性を認め、重症例では回復期病棟における重症例の定義(日常生活機能評価得点10pt以上)と合致する.よって、初期NIHSSによる日常生活機能評価に対応する予後予測は可能と考えられ、早期転帰予測の可能性が示唆された.転帰先に関しては中等度、重症例における自宅退院例は14例中1例のみであり、転帰としては転院が見込まれるため、初期NIHSS score7pt以上の例では、早期転院を視野に入れた介入が望まれる.軽症例では自宅復帰例13例、転院・未退院例10例と転帰に一貫性を欠き、初期NIHSS score6pt以下の例では慎重な転帰予測の必要性が伺われた.早期転帰予測の可能性を握る軽症例における転院・未退院例について調査すると、転院例では5例全てが高次脳機能障害を有しており、未退院例では小脳病変を有する例、急性期治療中である例が5例中4例であった.以上より、初期NIHSS score6pt以下の例では、NIHSSでは把握が難しい高次脳機能障害について詳細を評価した上での転帰予測の必要性が考えられる.また、NIHSSでは過少評価されてしまう小脳・脳幹病変を有する例や、急性期治療に時間を要することが予測される例では転帰予測を誤り未退院例とならぬよう注意が必要と考える.

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© 2009 日本理学療法士協会
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