理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1367
会議情報

骨・関節系理学療法
人工股関節全置換術(THA)前方アプローチと側方アプローチの筋力回復経過
鐘司 朋子相澤 孝一郎鍋城 武志蘭 康昭飯田 哲品田 良之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)における前方アプローチと側方アプローチの股関節外転筋力と膝関節伸展筋力の回復経過について在院日数などとあわせて比較検討を行った.
【対象】2003年11月~2006年12月までに当院整形外科で施行したTHA患者のうち,術後3ヶ月・6ヶ月・1年に評価が可能だった患者で,前方アプローチ79名(以下前方群)で変形性股関節症74名,大腿骨頭壊死5名,平均年齢62.9歳,側方アプローチ65名(以下側方群)で変形性股関節症63名,大腿骨頭壊死2名,平均年齢61.2歳とした.
【方法】両群間で手術から退院までの期間と1本杖歩行開始までの日数の比較,および術前・退院時・術後3ヶ月・術後6ヶ月・術後1年に等尺性の股関節外転筋力と膝関節伸展筋力をアニマ社製 μTasMF―01を用いて測定し術前筋力との比を回復率(%)として算出し比較検討した.
【結果】手術から退院までの期間は前方群は26日,側方群は31日,1本杖開始までは前方群は9日,側方群は14日となり,前方群は側方群に対し有意に短い結果となった.股外転筋力回復率は前方群においてすべての評価時で術前より有意な回復をみせたが,側方群においては術後3ヶ月以降に有意な回復となった.両群の股外転筋力回復率の比較では退院時に前方群は144%,側方群は129%となり,前方群おいて有意に高い結果となった.膝伸展筋力回復率は両群とも退院後からの回復となり,術後3ヶ月で前方群は139%,側方群は125%,術後1年では前方群147%,側方群140%と経過中は前方群の方が有意に高い回復経過となった.
【考察】前方アプローチは股外転筋に侵襲を加えないため側方アプローチに比べて早期に股外転筋力が回復したと思われる.膝伸展筋力において経過中回復率が前方アプローチで高かったのは,前方アプローチは股関節周囲筋への直接的な侵襲が少ないため立位歩行など移動動作が早期に可能で推進筋である大腿四頭筋の筋力回復も高かったのではないかと推察される.
【まとめ】前方アプローチは側方アプローチに比べて筋への侵襲が少ないため筋力回復も早く杖歩行など立位歩行動作が比較的獲得しやすく術後在院期間も短い.THAにおいては術式により筋力回復や術後経過に違いがあり,それを踏まえた上での理学療法の進め方が重要であることが示唆された.

著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top