理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 263
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神経系理学療法
片麻痺患者の足関節背屈筋群に対しMyotuning Approachによる有効性の検証
下河辺 雅也高田 治実江口 英範石垣 栄司前原 弘幸大場 遥子朝日 賢平木 天平高橋 徹中込 里美瀬戸口 恵莉
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抄録

【目的】
Myotuning Approach(以下MTA)の治療目的の一つに脳血管障害による片麻痺患者の即時的な随意運動の改善がある.今回の研究では片麻痺患者の足関節背屈筋群に対してMTAを施行し足関節の随意性を誘発させ,足関節背屈の自動運動による関節可動域(以下ROM )や10m歩行時間,Foot-pat test(以下FPT)などの運動機能の変化を検討することである.
【対象】
対象は,発症から8週~60週以内で当院に入院・外来通院している座位保持可能な23名の片麻痺患者(平均年齢68.0±11.1歳,発症日からの平均月数10.7±13.7月,男性15名,女性8名,Br-Stage2-5,右片麻痺15名,左片麻痺8名)とした.無作為にMTA介入群と非介入群に分類した.MTA介入群は平均年齢69.3±11.1歳,発症日からの平均月数14.2±16.5月,男性8名,女性4名,右片麻痺8名,左片麻痺4名であり,非介入群は平均年齢66.5±10.6歳,発症日からの平均月数7.0±9.3月,男性7名,女性4名,右片麻痺7名,左片麻痺4名であった.
【方法】
治療は,MTA介入群・非介入群ともに隔日(もしくは週3回)で22分実施し,計5回施行した.評価は,1)足関節背屈ROM,2)10m歩行時間,3)FPTの測定を行った.測定方法は,1)端座位で足関節20度底屈位にてゴニオメーターを用いて足関節背屈のROM検査,2)10m歩行時間は,10m間隔で床面に貼られた2本のテープ間を要する時間をストップウオッチで測定した.3)FPT(Br-Stage4以上が対象:介入群9名,非介入群6名)は,端座位にて30秒間の足関節背屈回数を測定した.MTA介入群は,前脛骨筋・長趾伸筋・長短腓骨筋・第3腓骨筋に対してのみ治療を行い,非介入群は足関節のROM-ex,足関節背屈の分離運動を行った.両群の有意差を判定するため,足関節背屈ROM,10m歩行時間にt検定(p<0.01)を行った.
【結果】
MTA施行前後の変化は,1)足関節背屈ROM4.9±3.3度の改善,2)10m歩行時間では4.3±3.0秒の短縮,3)FPTは7.6±5.5回増加し,1)と2)に有意差(p<0.01)が認められた.非介入群は,ROM-ex,分離運動の施行前後では足関節背屈のROM,10m歩行時間に著名な変化は見られなかった.MTA介入群と非介入群では,足関節背屈のROM,10m歩行時間ともに有意差(p<0.01)が認められた.
【考察】
今回の結果から,MTA施行により各筋を個別に直接刺激をすることで固有受容器が刺激され運動神経インパルスの増加と推測される.足関節背屈筋群の促通により随意運動を誘発し運動機能が改善したと考えられる.MTAは,脳血管障害に対し有効な治療法のひとつであることが示唆された.今後は多くの症例を評価し,表面筋電図など更なる検討を重ねていく必要がある.

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© 2008 日本理学療法士協会
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