理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 246
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神経系理学療法
重度脳性麻痺者の音響的骨評価値測定における信頼性の検討
木原 健二大畑 光司春田 大志生友 明代藪内 芳奈坪山 直生
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キーワード: 重度脳性麻痺, OSI, 信頼性
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抄録

【目的】
重度脳性麻痺者では同年代の健常成人と比較して骨の脆弱化が生じているとされる。骨の脆弱化は種々の要因により生じるが、重度脳性麻痺者では日常生活における座位・立位といった坑重力姿勢の制限により、骨への荷重機会が減少する影響が強いと考えられる。一般に重度脳性麻痺者では加齢に伴う筋骨格系・呼吸循環系の二次的障害の進行により、坑重力姿勢はより制限を受けるようになる。従って加齢に伴い骨の脆弱化が進行すると推察される。
音響的骨評価値(以下OSI)測定は非侵襲かつ簡便に骨評価が可能な方法であり、高齢者の骨評価に多く用いられる。OSI測定は重度脳性麻痺者における骨評価のスクリーニングに有用であると考えられるが、重度脳性麻痺者に対するOSI測定における信頼性についての報告はない。
そこで今回OSIの経年変化を検討する際の指標を確立することを目的として、OSI測定における変動係数(以下CV)を算出し、検者内信頼性・検者間信頼性の検討を行った。
【方法】
重症心身障害児・者施設入所中の17歳以上63歳以下の重度脳性麻痺者55名(男性32名、女性23名、平均年齢38.7±11.9歳)の中から8名を無作為抽出して測定を実施した。
OSI測定にはアロカ社製AOS-100を使用し、OSI・伝導音速(以下SOS)・透過指標(以下TI)の3項目を測定した。同一被検者に対して、(1)検者aにおける測定・(2)検者bにおける測定・(3)検者aにおける(1)の測定日の翌日の測定の合計3回測定を実施し、OSI・SOS・TIの各々についてCVを算出した。また級内相関係数(以下ICC)を用いて検者内信頼性及び検者間信頼性の検討を行った。
なお本研究は保護者の文書による同意並びに京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
平均値はOSI:1.806±0.166、SOS:1575.8±26.5、TI:0.727±0.060であった。CVはOSI:9.2%、SOS:1.7%、TI:8.3%の値が得られた。また検者内信頼性のICCはOSI:0.640、SOS:0.920、TI:0.584、検者間信頼性のICCはOSI:0.652、SOS:0.856、TI:0.578の値が得られた。
【考察】
健常成人に対して同様の測定機器を使用した報告では、CVはOSI:1.5~1.6%、SOS:0.2~0.3%、TI:1.2~1.4%とされている。今回算出されたCVはこれらの数値を上回る値を示した。この一要因としては、重度脳性麻痺者特有の足関節・足部の変形が強い対象者では足部を中間位に保持することが困難であり、前額面上で超音波を伝播させる測定機器の性質上、TI測定値に誤差が生じやすいためと推察される。
重度脳性麻痺者に対するOSI測定値の経年比較においては、今回算出されたCVを超える変化が生じていれば誤差を超える範囲で骨量の変化が生じていると考えられる。また検者内信頼性及び検者間信頼性については良好なICC値が得られ、今回と同様の手法によるOSI測定の信頼性が確認された。

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© 2008 日本理学療法士協会
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