理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 867
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理学療法基礎系
1回のバランス練習での短期介入効果
小規模RCTによる検証
桒原 慶太新井 智之目黒 智康佐藤 涼子小林 美奈子大沢 涼子成田 美加子渡辺 学金子 志保内山 靖
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抄録

【目的】理学療法においては、限られた介入時間・期間の中で日常生活活動の向上に結びつく機能的制限の改善が求められる。そのため、特定の介入がいかに大きな波及効果を示すかを検討し、介入項目を選択・実施することが重要となる。そこで本研究では、1回のバランス練習がどの程度の直接効果と波及効果を生じるのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は、歩行障害を主訴として理学療法を施行していた73人のうち、取り込み基準(40歳以上、10m以上の歩行が可能、バランスの低下を認める)と除外基準(著しい疼痛を有する、認知機能が低下している)を満たし、書面で研究に同意の得られた者とした。なお、ここでいうバランスの低下とは不安定板(DYJOC、酒井医療(株)、直径300mm、船底型ボス40mm)上で立位保持時間が30秒未満の者と定義した。その結果、対象は55人(骨・関節系疾患35人、脳血管障害18人、その他2人、平均年齢70.7±10.3歳、男性18人、女性37人、平均罹患期間83.6±73.7日)で、単純無作為化にて介入群30人と対照群25人に分類した。バランス課題は、不安定板での姿勢保持によるバランス練習とした。介入群は不安定板上で開脚立位、対照群は端坐位の姿勢をなるべく上肢で支持をせずに保持することとし、1分間の休憩を含めて5分間実施した。直接効果の指標として、不安定板上での立位保持時間を課題の直前と直後に測定した。波及効果の指標として、片脚立位時間、360度回転、Functional reach test(FR)、Timed“Up and Go”test(TUG)、閉脚立位での重心動揺、最大歩行速度(MWS)を同様に測定した。統計学的解析は、χ二乗検定、Wilcoxonの符号付順位検定、Mann-whitney検定を用い、いずれも危険率5%未満を有意とした。
【結果と考察】
両群間において、年齢、罹患期間、認知機能、性別、疾患分類に有意な差を認めなかった。課題後の直接効果は、不安定板上での立位保持時間は介入群が4.0±4.9秒から9.9秒±10.3秒と有意な変化を示したが、対照群は3.4±3.9秒から4.3秒±5.5秒で有意な差を認めなかった。また、波及効果として各指標で10%以上の改善がみられたものは、片脚立位時間が介入群16人(53.3%)、対照群8人(32.0%)、360度回転が介入群16人(53.3%)、対照群5人(20%)、TUGが介入群12人(40%)、対照群1人(4%)、FRが介入群3人(10.0%)、対照群2人(8%)、重心動揺が介入群14人(46.7%)、対照群12人(48.0%)、MWSが介入群7人(23.3%)、対照群0人(0%)であり、360度回転、TUG、MWSでは両群間に有意な差がみられた。
【結論】
1回5分以内の不安定板上での立位保持練習は、実施直後の直接効果に加えて他のバランス評価指標を改善させる波及効果が示された。今後は効果の持続性など時間的因子についても検証する必要がある。

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© 2008 日本理学療法士協会
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