理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 864
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理学療法基礎系
バランスボード上でのスクワット動作における下肢筋活動量の筋電図学的検討
宮坂 淳介市橋 則明建内 宏重森 公彦西村 純中村 孝志
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抄録

【目的】筋力増強に加えバランス能力向上を目的としたバランスボード(以下BB)上での下肢CKC(closed kinetic chain)トレーニングは臨床上よく行われている。しかし、BB上でのCKC動作時の筋活動量について、筋電図学的な側面から検討している報告は少ない。本研究の目的は、代表的なCKCトレーニングであるスクワットおよび片脚スクワットを床面とBB上で行い、その際の筋活動量を比較することである。
【対象・方法】対象は健常成人男性12名(平均年齢28.2±4.5歳、平均身長170.6±6.3cm、平均体重64.2±8.7kg)とした。対象者には本研究の趣旨と目的を説明し、同意を得た。測定筋は大腿直筋(RF)・内側広筋(VM)・大殿筋(GM)・内側ハムストリングス(MH)・前脛骨筋(TA)・腓腹筋(GC)およびヒラメ筋(SO)とした。スクワットおよび片脚スクワットは体幹直立位・膝関節屈曲60°に固定した静的な肢位とし、床面およびBB上でそれぞれ姿勢が安定してから3秒間の筋電図を測定した。なお、BBにはBOSU(Bosu Fitness社製)を用いた。BOSUは半球状のBBであり、半球を上にした場合(BOSU表)と下にした場合(BOSU裏)とに分けて測定した。測定値は各筋の最大随意収縮時のRoot Mean Square(RMS)振幅値を100%として正規化し、%RMSとして表した。統計には、反復測定分散分析を用い、有意差が生じた場合Scheffeの多重比較を行った。
【結果】スクワット・片脚スクワット両動作ともに、RF・VMを除き、各筋において床面よりもBOSU表・裏で筋活動量が有意に増加した。なかでもTA、GC、SOの筋活動量が大きく増加した。スクワット床面とBOSU表を比較すると、TAは1.7%→33.2%、GCは5.3%→14.7%RMS、SOは15.8%→28.3%へと筋活動量はそれぞれ増加し、片脚スクワットでも同様にTAは9.3%→36.7%、GCは11.6%→32.2%、SOは31.5%→58.2%へと増加した。GM・MHの筋活動量はBOSU表での片脚スクワット時に有意な増加を示したが、それぞれ12.1%RMS、12.4%RMSにとどまった。一方、RF・VM筋活動量は床面とBOSU表・BOSU裏との間に有意差は生じなかった。また、BOSU表と裏での筋活動量の比較では、BOSU表での動作時に筋活動量が高い傾向はあるものの、スクワットでのGM・TAを除き有意差は生じなかった。
【考察】床面よりもBB上でのスクワット・片脚スクワット動作において、有意な筋活動量の増加を示し、かつ、高い筋活動量を示したのは足関節底背屈筋であるTA・GC・SOであった。このことから、不安定な支持面上で静的な姿勢を保持するために足関節底背屈筋の筋活動量が増加したと考えられ、姿勢コントロールにおける足関節の重要性が示唆された。一方、膝関節角度を固定した静的なスクワット動作のため、膝関節周囲筋の筋活動量に有意差は生じなかったと考えられる。
【まとめ】BB上での静的なCKCトレーニングでは足関節周囲筋の筋活動量を増加させることが明らかとなった。

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© 2008 日本理学療法士協会
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