理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 286
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骨・関節系理学療法
人工膝関節全置換術後可動域の経時的変化
第1報
*江玉 睦明飯田 晋渡辺 博史濱辺 政晴古賀 良生佐藤 卓
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抄録

【目的】人工膝関節全置換術(以下,TKA)のリハビリテーションは術後早期より開始される。関節可動域(以下,ROM)についても早期の獲得が重視されている。今回,TKA後早期の膝屈曲ROMと屈曲改善角度を経時的にとらえ検討したので報告する。
【対象】平成16年11月から平成18年7月までに当院にてTKAを施行した患者(13名17膝,男性4名,女性9名,全例変形性膝関節症,平均年齢73±4歳)を対象とした。機種は全例 ADVANCE Medial Pivot Knee(Wright Medical Technology社製)を使用した。
【方法】術後3日及び1週から6週までの他動・自動膝屈曲ROMを測定し,各週での屈曲改善角度を求めた。そこで術後6週での他動膝屈曲ROMが120°以上(以下,良好群)9名(平均年齢:74±4歳,10膝)と120度未満(以下,不良群)4名(平均年齢:72±3.5歳,7膝)の2群に分け,3日~2週まで(以下,I期)と2週~6週まで(以下,II期)の屈曲改善角度について検討した。
統計学的検討には,各項目での経時的変化では反復測定分散分析,多重比較法(Tukey-Kramer法),2群間では対応のないt検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】全体での膝屈曲ROMは,他動・自動ともに2週まで有意な改善を認め,屈曲改善角度は,他動・自動ともに3週以降に比して2週まで有意に高値を示した。良好群は不良群に比して,術前他動膝屈曲ROM(良好群:138±10.2°,不良群:128±13°),術前自動膝屈曲ROM(良好群:131±12°,不良群:120±13.7°),I期他動屈曲改善角度(良好群:48.2±22°,不良群:27.7±15.1°),I期自動屈曲改善角度(良好群:47.9±22.9°,不良群:24.2±18.9°),2週以降での他動・自動膝屈曲ROMは,有意に高値を示した。II期の他動屈曲改善角度(良好群:10.8±8.9°,不良群:16.3±8.8°),II期の自動屈曲改善角度(良好群:10.3±6.1°/不良群:14.2±4.2°)は有意差を認めなかった。
【考察】TKA後の膝屈曲ROMは,一般的に手術前の膝屈曲ROMに最も影響されるとされている。今回,良好群は不良群に比して,術前の膝屈曲ROMに加えて術後3日~2週までの他動・自動屈曲改善角度も有意に高値を示しており,術後早期のROMの獲得が重要であることが示唆された。術後早期は炎症症状が強い時期であるため,いかに炎症症状を管理しながらROMを獲得していくかが重要であると考えられた。術後良好な膝屈曲ROMの獲得には術前のROMの向上とともに、術後2週までの早期にROMの獲得が重要であると考えられた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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