理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 735
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神経系理学療法
筋萎縮性側索硬化症の訪問リハビリテーションの検討
人工呼吸器管理選択の有無による2事例について
*梅津 鋼太田 芳比古
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抄録

【はじめに】筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の理学療法は、多様な障害に対してその都度、進行に合わせた対応が必要であると報告されている。今回、多様な障害のうち、呼吸障害に対して、人工呼吸器管理を選択した事例と選択しなかった事例の2例を通して、訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)実施内容を整理し検討する。
【対象および経過】事例A:71歳の男性。03年3月四肢の筋力低下にて発症。04年3月確定診断。04年5月より週2日の訪問リハ開始。ALS重症度分類4度。04年11月より歩行が困難となり、05年5月に呼吸不全のため人工呼吸器管理となる。訪問リハ実施内容として人工呼吸器管理以前は、歩行器での介助歩行訓練、病状の進行に合わせたADL訓練・家族への指導、息ためや咳等の呼吸リハを実施。人工呼吸器管理後は、無気肺・感染予防とリラクゼーション目的の呼吸リハ、車椅子による外出訓練を実施。事例B:74歳の男性。03年11月左下垂足にて発症。04年9月確定診断。05年1月より週2日の訪問リハ開始。ALS重症度分類2度。T字杖歩行監視レベルであったが、6月より歩行困難となり、介護者との間に衝突が多くなる。(ALS重症度分類5度)9月よりベット上の生活となり入院。
【結果および考察】事例の共通点として、ALS重症度が5度までは、本人や家族またはヘルパーにその都度、障害を説明し、具体的なADL動作の指導を実施した。また呼気流速が低下し、排痰が困難となり呼吸苦が出現したので咳や息ため、呼吸筋のストレッチ等を実施した。早期での呼吸に対する関わりは、呼吸苦を緩和させることで、病気の進行の不安が軽減される。つぎに相違点として、A例では人工呼吸器管理後、車椅子による外出訓練を実施した。文字盤を通してQOL向上に有効であることが確認でき、家族も同様である。B例では、病気の進行や死に対する不安と家族の介護疲労や病気の認識不足の間で衝突が生じた。そこで訪問時、互いの主張を傾聴する時間を設定し、専門職として積極的に介入し、ストレスによる言葉の暴力がでてしまう状況を肯定する作業を実施した。さらに具体的に対応可能なことは即座に実施する作業を繰り返したことで、訪問日まで衝突を避けることができ、短時間のレスパイトケアになったと思われる。
【まとめ】2事例ともに障害の進行に応じた早期からの呼吸リハやADL動作の指導を即座に実施することが必要であった。そして人工呼吸器管理を選択する事例は、屋外へ活動範囲を拡大していくことが、QOLの向上となり、人工呼吸器管理を選択しない事例は、積極的な介護者を含む精神的支援が重要と思われた。

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© 2007 日本理学療法士協会
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