理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 629
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理学療法基礎系
下肢挙上動作時における骨盤傾斜角と腹横筋厚の関係
*布施 陽子福井 勉矢崎 高明山口 徹
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抄録

【目的】
臨床上、体幹安定性向上エクササイズにより、動作に安定性が生じる経験を持つ。しかし、体幹安定性に対する評価については明確な定義が見当たらない。今回、臨床でよく用いる下肢挙上時での骨盤傾斜角を計測し、体幹安定筋とされる腹横筋の関係から安定性指標とすることの是非について実験的に検討したので報告する。
【方法】
対象は、健常成人男性5名、女性1名の計6名、平均年齢:29.0±10.0歳、平均身長168.0±6.0cm、平均体重:63.0±9.0kgであった。被験者に実験の主旨と方法を説明し、腹横筋の収縮を超音波装置によりフィードバックしながら十分に練習した上で計測した。測定機器は、超音波診断装置(日立メディコEUB-8500)、3次元動作解析装置(VICON-MX)、床反力計(AMTI社)を用いた。計測開始肢位は、背臥位で両股関節屈曲90度,内外転0度,足部に床反力計を位置させた。マーカーは上前腸骨棘、大転子、膝関節部、外果、第2中足頭部に添付した。超音波プローブは左側腹部(肋骨下縁と腸骨稜の間)に位置させ、下肢挙上動作計測時の静止画を記録した。下肢挙上前の腹横筋厚の状態を予測するため、下肢挙上量を主観的に0,20,40,60,80,100%挙上させ、その際の足部荷重量を床反力計で計測しながら、事前に腹横筋収縮を行った場合と行わない場合各々の条件で計測した。その間3次元動作解析装置で安定した3秒間を撮影し、骨盤傾斜角の測定を行なった。
【結果】
1.骨盤傾斜角は事前に腹横筋収縮あり(2.2±1.51°)の場合、なし(2.6±2.02°)と比較し有意に小かった(p<0.01)。2.腹横筋厚は事前に収縮あり(49.4±12.9mm)の場合、なし(33.2±7.6mm)と比較し有意に大きかった(p<0.01)。3.事前に腹横筋収縮ありの場合、左下肢挙上時では骨盤傾斜角が小さいほど左腹横筋厚は大きく(p<0.05)、右下肢挙上時では骨盤傾斜角が大きいほど左腹横筋厚は大きかった(p<0.01)。4.下肢挙上量と腹横筋厚の間には、相関関係は認められなかった。
【考察】
事前に腹横筋収縮を行った場合の計測では、骨盤傾斜角は小さくなり腹横筋が骨盤の安定化に関与している事が示唆された。また、右下肢挙上時の左腹横筋厚の変化については、Urquhartらが報告している、腹横筋厚が体幹回旋時に反対側で厚くなる結果と同様な傾向がみられた。これは腹横筋が体幹正中化に寄与している事を示唆するものと考えられる。下肢挙上量と腹横筋厚の間に、相関関係が認められなかったのは、20%程度の下肢挙上でもすでに腹横筋が活動しており、挙上前の先行活動についての計測ができなかったためと考えられる。今後はこの先行活動の計測について検討したい。
【まとめ】
骨盤傾斜角度は腹横筋機能の指標要素の1つとなり得ると考えられる。

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© 2007 日本理学療法士協会
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