理学療法学Supplement
Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 617
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理学療法基礎系
立ち上がり動作における足部アライメントがハムストリングスの筋活動に及ぼす影響
*岩尾 潤一郎対馬 栄輝石田 水里大本 靖花
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抄録

【目的】変形性膝関節症患者では動作中の膝回旋異常が指摘されている(古賀ら,1997;管川ら,2004).閉鎖運動連鎖(CKC)の動作における膝関節回旋運動(膝回旋)には,足部回内外のアライメントが影響する.これにはハムストリングスの筋活動も関与すると考える.特に膝への負荷が大きく,日常生活で頻繁に行われる椅子からの立ち上がり動作においては興味深い.そこで基礎実験として,健常者を対象に立ち上がり動作を行わせ,足部アライメントを変化させたときにハムストリングスの筋活動がどのように変化するかを比較検討した.
【方法】対象は健常若年者18名(男性8名,女性10名;平均年齢は21.4±2.7歳)とした.測定肢はボールを蹴る下肢とし,測定肢の内側ハムストリングス(MH),外側ハムストリングス(LH)部に表面電極を貼付した.足部アライメントを変化させるために,両下肢の足底に自製の内側楔状板または外側楔状板を装着させた.対象者に楔状板なし,内側または外側楔状板(1.5cmと3.0cm)を装着した計5条件で,椅子からの立ち上がり動作(椅子の高さ40cm)を行わせた.動作時に上肢は胸の前で組んでもらった.被験者には,あらかじめ数回の練習を行ってもらい,その後に立ち上がりと着座動作を連続して3回行わせた.同時にMHとLHの筋電波形(EMG)を記録した.なお,参考までに各条件で自然立位でのEMGも記録しておいた.また,楔状板を装着する順序は,被験者ごとに無作為とした.記録したEMGはキッセイコムティック社製BIMUTUSを用いて,立ち上がり始めから立位まで(立ち上がり)と,立位から着座(着座)までの動作中EMG積分値(IEMG)を算出した.求めたIEMGは,膝関節屈曲の最大等尺性収縮時IEMGに対する割合で表した.筋の条件(MH,LH),肢位・動作の条件(自然立位,立ち上がり,着座動作),また楔状板の条件(楔状板なし,内側楔状板1.5cmと3.0cm,外側楔状板1.5cmと3.0cm)の3要因に差があるかを分割プロットによる分散分析(SP-ANOVA)を行い,有意な要因については多重比較法(Tukeyの検定)を適用した.
【結果】SP-ANOVA(Huynh-Feldtの検定)では楔状板の条件と動作の条件(p<0.01)でMH・LHのIEMGに有意な差が見られた.これらのうち楔状板の条件に注目して,筋別・動作別に差をTukeyの検定で検討した.自然立位では有意な差はなかった.MH,LHともに,立ち上がり動作では外側楔状板1.5・3.0cmが楔状板なしならびに内側楔状板1.5・3.0cmよりも有意に低く(p<0.01),着座動作で有意に高かった(p<0.01).
【考察】膝の終末強制回旋運動で下腿は外旋するが,足部が固定されている立ち上がり動作では,相対的に大腿骨は内旋する.この運動に外側楔状板は有利に働いたと考える.着座の際は逆の作用を考えた.しかし,関節の運動は測定していないため明確なことはいえず,今後検討を要する.

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© 2007 日本理学療法士協会
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