理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 801
会議情報

生活環境支援系理学療法
障害者雇用に関する企業への実態調査
―障害者の就労支援における理学療法士の役割の検討―
*江濱 崇松野 俊次嶌村 善照成田 謙渡邊 恒也手嶋 雅史近藤 陽一川合 信吾林 伸一郎
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キーワード: 障害者, 就労, 役割
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抄録

【はじめに】
 障害者が地域生活を送るための目標として、「働く」ということは、自立に向けた最終の目標となる。そこで、今回、一般企業(以下:事業所)を対象に、障害者雇用の現状と雇用をするための必要な条件についてアンケートを郵送にて実施し、理学療法士の役割について検討したので報告する。
【対象と方法】
 対象は、豊田市と東西加茂郡の312事業所を対象とし、平成16年5月17日から平成16年5月30日に、障害者雇用についてのアンケート調査を実施した。アンケート内容は 1:各事業所の業種 2:従業員の規模 3:障害者の雇用状況 4:障害者を雇用する際の紹介元 5:障害者の業務内容 6:障害者を雇用する場合の各事業所の課題 7:障害者の雇用拡大のために必要なサポートについてであり、各項目について回答を得た。
【結果】
 豊田・加茂地域の312事業所のうち172事業所から回答を得て、回収率は55.1%である。事業所の職種の内訳は、製造業83件、サービス業31件、運輸業16件の順で多く、障害者を雇用している事業所が計118事業所あった。また、障害者を雇用する場合の紹介元については、自社で採用する場合が多く63事業所、ハローワークからは39事業所である。障害者の業務内容は、製造技能職72件 一般事務32件だが、その他も44件と多く、その内訳としては、配膳・清掃業務、マッサージ師、駐車場管理、警備員など多岐にわたっていた。企業が障害者を雇用する場合の課題は、業務選定の難しさ・設備改善が必要・従業員とのコミュニケーションの問題を挙げている。そして、雇用拡大のための必要なサポートについては、障害者の能力把握が最も多く、助成金の拡大・職業訓練の希望もあった。
【考察】
 豊田市と東西加茂郡の地域性として自動車関連の製造業が多く、障害者の雇用もその分野で行われている場合が多い。その紹介元として、通常はハローワークが中心と予測されたが、現状は各事業所内で障害者雇用を進めている場合が多かった。その結果、雇用する際の事業者側の課題として、本人の身体状況や作業能力を専門的に判断できず、実際の業務を選定するのが難しくなり、そのための設備改善にもコストがかかるという課題がでてきていることが考えられる。事業所が必要としているサポートとしても障害者の能力把握ということもふまえると、障害者の身体・作業能力を十分に評価し、それを事業所側に伝え、個々の障害状況にあった仕事内容を選定していただくことが、障害者の「働く」という目標に答えられるのではないか推測された。その中での理学療法士の役割は、本人の生活評価から職場評価・就労場所の環境調整など、幅広く活動できると思われ、早期からの各事業所との連携が重要になると考えた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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