理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 859
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神経系理学療法
脳血管障害における屋外歩行自立度予測判定
*佐々木 秀幸吉本 好延吉村 晋明崎 禎輝田村 千恵堅田 裕次平賀 康嗣山下 明広濱岡 克伺
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抄録

【目的】
 脳血管障害患者の屋外歩行能力に関連する因子には,運動麻痺,感覚障害,高次脳機能障害など複数の機能障害が関与する。そのため,これらの因子を組み合わすことによって,屋外歩行の自立度を予測することができれば,リハゴールの設定に有効であり,明確な先行刺激になる。今回,当院における脳血管障害患者の屋外歩行能力に関連する因子を検討し,これらの因子から屋外歩行自立度が予測可能かを検討した。

【対象】
 平成16年4月から10月までの間に,当院に入院した脳血管障害患者94名中,補助具非使用にて立位保持困難,高次脳機能障害,四肢麻痺,他の整形外科的疾患を有する症例を除く25例(平均年齢65.9±8,6歳,平均病日126.4±52.6日),男性15例,女性10例であった。下肢BRSは2が1例,3が4例,4が9例,5が3例,6が8例であった。

【方法】
 屋外歩行自立例をMassachusetts General Hospital Functional Ambulation Classification(FAC)のカテゴリー6に準じ「屋外平地,階段昇降,坂道歩行が歩行補助具使用にて歩行可能な症例」と定義し,屋外自立群と非自立群の2群に分類した。屋外歩行自立度との関連を検討するための因子として,年齢,性別,下肢のBrunnstrom recovery stage(以下下肢BRS),表在・深部感覚,麻痺側・非麻痺側片脚立位,Functional Reach test(以下FRT),Timed Up and Go test(以下TUGT),非麻痺側膝伸筋力の10項目を選出した。
統計処理は,屋外歩行自立度と上記の10項目をスピアマンの順位相関係数を用いて関連性を検討した。また,目的変数を屋外歩行の可否,説明変数を上記10項目とするステップワイズ判別分析を行い,屋外歩行自立度に最も関連する因子と予測式を検討した。

【結果】
 屋外歩行自立の分類では,自立群18例,非自立群7例であった。今回選出した10項目中,屋外歩行自立度と有意に相関を認めた項目は,表在・深部感覚,下肢BRS,麻痺側・非麻痺側片脚立位,FRT,TUGTの7項目であり,先行研究を支持する結果であった。また,判別分析の結果,屋外歩行自立度に関連する主因子はTUGTであり,予測式z=0.08×TUGT-2.406(予測的中率96%)が求められた。予測式より屋外歩行自立の可否はカットオフ値30秒が算出され,30秒未満の場合,屋外歩行自立,30秒以上の場合,屋外歩行非自立と予測判定された。

【考察】 
 本結果から,屋外歩行の自立度を検討するために選出した10項目中,主因子はTUGTであり,TUGTにより96%の予測的中率が得られた。屋外歩行自立度の予測は,筋力や運動麻痺など機能障害の程度を組み合わせることにより予測率が向上するが,臨床現場では非常に煩雑である。TUGTはこれら機能障害を複合した能力指標であり,特殊な機器を必要とせず,測定が簡便でかつ感度が高い。このような能力指標は臨床適応が望まれる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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