理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 504
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理学療法基礎系
月齢の違いが荷重負荷後のラットヒラメ筋に及ぼす影響
*横川 正美山崎 俊明武村 啓住井上 克己立野 勝彦
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キーワード: 加齢, 荷重, 廃用性筋萎縮
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抄録

【はじめに】
 理学療法で行われる立位練習での荷重負荷は、廃用性筋萎縮の予防、さらには筋力強化につながるものとして有用である。このような荷重による骨格筋への負荷は一般的な筋力強化に比べて低強度で、その効果は筋萎縮や加齢の程度に応じて異なる可能性がある。これまで成熟、あるいは老齢ラットで後肢非荷重間の間欠荷重効果が報告されているが、実験期間や方法が異なり、各々の結果から月齢による効果の違いを単純に比較することは難しい。本研究では廃用性筋萎縮後の月齢の異なるラットに荷重負荷を試行し、その影響の差違について組織化学的手法で検索した。

【方法】
 Wistar系雄ラット3ヶ月齢18匹と9ヶ月齢16匹を対象とした。廃用性筋萎縮はジャケットを使用した後肢懸垂法にて作製した。各々の月齢で対照群:通常飼育、荷重群:後肢懸垂飼育し、1週間後より一日1時間荷重、懸垂群:後肢懸垂飼育の3群にわけた。実験期間は3週間とし、終了後に麻酔下にて右ヒラメ筋を採取し、凍結横断切片を作成した。切片はATPase染色を行い、筋線維横断面積を計測して、各群のヒストグラムを作成するとともに平均値を算出して比較した。分析は筋線維タイプのうち、タイプ1線維について行った。

【結果】
 筋線維断面積のヒストグラムは対照群がほぼ正規分布を呈していたのに対し、荷重群、懸垂群では左側に偏移し、鋭角になった。ヒストグラムの分散は対照群では月齢による差はなかったが、荷重群、懸垂群では9ヶ月齢のほうが3ヶ月齢より大きかった。筋線維断面積平均値の結果は月齢に関わらず同様であり、対照群に比べて荷重群、懸垂群の値は有意に減少していた。荷重群の筋線維断面積は懸垂群よりも大きい傾向が認められた。次に1時間荷重の効果について、各々の月齢毎に荷重群と懸垂群の筋線維断面積の差をとり、月齢間で比較した所、有意な違いはなかった。

【考察】
 対象は、ヒラメ筋のタイプ組成がほぼ安定したと考えられる月齢として3ヶ月齢を、また後肢筋の重量、および筋線維径が最大になるとされている月齢として9ヶ月齢を設定した。荷重群、懸垂群におけるヒストグラムの分散は3ヶ月齢に比べて9ヶ月齢でより大きく、廃用性筋萎縮後の荷重負荷や非荷重による筋線維断面積変化は、9ヶ月齢では反応性の差が大きくなることが示唆された。廃用性筋萎縮後の荷重負荷による影響は、今回の実験では両月齢で同様と考えられた。

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© 2005 日本理学療法士協会
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