理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 468
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理学療法基礎系
寒冷療法の知覚神経伝導速度に及ぼす影響について
*三和 真人
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抄録

【はじめに】
 神経伝導速度の皮膚温の変化が影響することは既知となっている。特に、運動神経伝導速度(MCV)をはじめ、複合筋活動電位(CMAP)の誘発時に伝導速度は、1°Cにつき約2 m/secの速度で直線的に増加することが報告されている。しかし、皮膚温が29°C以下での複合神経活動電位(CNAP)による知覚伝導速度(SCV)変化の報告は希少である。そこで、本研究は29°C以下の皮膚温がSCVにどのような影響を与えるかを目的として、寒冷療法による皮膚温と知覚伝導速度の関係を検討し、若干の知見が得られたので報告する。
【対象および方法】
 対象は右後脛骨神経に伝導ブロックのない健常女性7名(平均20.8歳)とし、実験方法と目的を説明し同意を得た者とした。実験は、右下肢膝関節屈曲30°、足関節0°中間位の腹臥位で、ICE PADを下腿に15分間および30分間貼付することとした。なお、実験室は25°Cの一定温度とした。後脛骨神経のSCV測定は、Behse (1971)らの順行性SCV測定方法に準じ、刺激電極は母趾、遠位記録電極は内果とアキレス腱の間、近位記録電極は膝窩上3cmとした。SCV波形は加算平均30回とし、導出電極間の潜時を計測した。なお、記録電極間距離は2cmとし、両電極部ともに直接ICE PADの接触のない箇所とした。皮膚温は、TAKARA D922を用いて計測した。統計は、ICE PAD開始前、15分、30分の皮膚温、潜時、SCVを反復測定ANOVAで処理し、有意水準5%の危険率で差の検定を行った。
【結果】
 ICE PADによる皮膚温(°C)は、実験の開始前31.4±0.2、15分後23.3±1.3、30分後25.0±1.4であった。開始前と15分後、開始前と30分後にそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。また30分後の方が15分後に比較して皮膚温が高い傾向にあった。潜時(msec)は実験の開始前5.97±0.93、15分後7.60±1.6、30分後9.27±1.08であった。開始前と30分後との間に有意差(p<0.05)が認められた。潜時導出の電極間距離335±14.7mmから算出したSCV(m/sec)は、実験開始前56.9±6.6、15分後45.2±7.6、30分後36.5±4.8となり、開始前と15分後、開始前と30分後にそれぞれ有意差(p<0.05)が認められた。
【考察およびまとめ】
 30°C以下に皮膚を冷却する本研究の結果から、SCVは15分後の皮膚温1°Cで約1.5m/secの低下を示し、30分後に約2.4m/secに減速した。これはKimuraらの先行研究とほぼ一致しており、Naチャンネル開閉の活性遅延が考えられる。また、30分後の皮膚温が上昇するにも関わらず、SCVが低下することよりNaチャンネル活性低下が持続することが考えられる。今後は、SCVとNaチャンネル開閉遅延の持続特性について研究を進めていきたい。

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© 2005 日本理学療法士協会
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