理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: TO097
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健康増進
民間フィットネスクラブで習慣的に運動を実施する中高年者の運動継続因子に関する研究
運動参加状況による比較
*大工谷 新一鈴木 俊明原田 宗彦
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抄録

<目的>理学療法士が中高年者の健康増進を目的として運動処方を行う場合には、対象者に実際に運動を継続させるための介入が重要である。本研究では、運動処方に際して運動を継続させる要因を明らかにする前段階として、実際に運動を実施している中高年者の運動継続因子について、運動参加状況別に比較検討した。<対象と方法>民間のフィットネスクラブ1施設に属する40歳以上の会員115名(男性29名、女性86名)を対象とした。集合調査法に準じた方法でクラブ利用時に質問紙を配票して回答を依頼し、順次回収した。調査期間は、平成13年12月25日から3日間であった。調査内容は、現在の運動参加状況と運動継続関連項目とした。運動参加状況は、運動実施が不定期(準備期)、定期的な運動を始めて6ヶ月以内(実行期)、定期的な運動を6ヶ月以上続けている(維持期)の3つに分類した。また、運動継続関連項目としては、諸家の先行研究を参考に31の質問項目を設定した。31の運動継続関連項目の測定尺度には「非常にそう思う、そう思う、どちらでもない、あまり思わない、そうは思わない」の5段階評定を採用し、その数量化には順に5、4、3、2、1の得点を与え、間隔尺度を構成するものと仮定した。回答結果からの運動継続因子の抽出には、直交回転バリマックス法による主成分分析を用いて、因子負荷量から各因子を分類した。次に、抽出された各因子の因子得点を算出し、各運動参加状況における因子得点の分布と運動参加状況別における平均値の比較を行った。<結果>運動継続因子としては、社会関係、運動効果、施設、プログラム、施設環境、自己確信の6因子が抽出された。運動参加状況別の因子得点は準備期、実行期、維持期の順に、社会関係:-0.35、-0.63、0.12、運動効果:-0.47、0.45、0.08、施設:-0.14、0.33、0.01、プログラム:-0.20、0.29、0.03、施設環境:0.32、0.93、-0.17、自己確信:-0.10、-0.12、0.01であった。準備期では、施設環境と施設が高得点となる傾向にあり、実行期では運動効果と施設環境の得点が高くなる分布を示し、維持期では社会関係が高得点となる傾向を示した。各因子における運動参加状況別の因子得点平均値の比較では、運動効果、施設環境の2因子で有意な差がみられた(ANOVA:p<0.01)。<考察>今回の結果から、準備期では施設環境に影響されやすいこと、実行期では運動効果や施設環境が重要であること、維持期では社会関係に影響されやすいことが示唆された。つまり、中高年者の健康増進を目的として、運動参加状況の違いに応じて運動継続に介入する方法としては、以下のことが必要であることがわかった。すなわち、運動が習慣化していない者(準備期)には、施設環境(施設の立地など)についてアピールしていくことが必要であり、運動が習慣化してくるにつれ、運動効果や運動をすることによる仲間との社会関係構築に介入方法を変化させていくことが必要である。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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