理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP117
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運動・神経生理
歩行とエルゴメーター運動における筋活動の比較
*田中 直次郎小林 賢東海林 淳一牛場 潤一市川 雅彦遠藤 敏正門 由久里宇 明元千野 直一
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抄録

【はじめに】我々は第20回日本私立医科大学理学療法学会において、エルゴメーター運動では種々の姿勢変化に関らず、ペダル周期に応じた一定の筋活動パターンを示すことを報告した。そこで今回は歩行獲得を目的とした練習の一手段として、エルゴメーターの有用性を検討するために、歩行とエルゴメーター運動について、筋の活動パターンという観点から比較・検討したので報告する。【方法】対象は年齢24_から_33歳の健常男性4名とした。歩行は時速4kmのトレッドミルを、各被検者の自由な歩調で歩行させた。エルゴメーター運動は、三菱社製Strength Ergo 240を用い、負荷はアイソトニックモードで10Nmとし、セミリカンベント肢位で運動させた。ペダル回転数を歩行と合わせるために、各被検者の歩調をメトロノームで提示し、回転数をあわせるよう指示した。これらの運動中に、被検者の右下肢ヒラメ筋、腓腹筋内・外側頭、前脛骨筋、内・外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋から表面筋電図を記録した。また、電気角度計を膝・足関節に装着し、関節角度も記録した。筋電図はフットスイッチと膝関節角度を基点に整流、正規化し、50施行分を加算平均処理して、筋活動パターンを比較・検討した。【結果】歩行、エルゴメーター運動とも、全被検者に共通した周期的な筋活動パターンを認めた。両者の類似点は、a)膝の伸筋群の活動に続いて下腿の伸筋群が活動し、次に前脛骨筋が活動するという経時的な活動順序。b)下腿伸筋群と前脛骨筋の拮抗的な活動、などであった。一方、両者の相違点は、a)同じ筋群でも、単関節筋と二関節筋の活動パターンが異なる。b)腓腹筋内外側頭の優位性が異なる(歩行では内側頭が、エルゴメーター運動では外側頭が優位であった)。c)エルゴメーター運動で、膝伸筋群の活動が大きく、前脛骨筋の活動が小さくなる傾向を認める。d)エルゴメーター運動では各筋の筋活動パターンの変化がなだらかである、などであった。【考察】歩行とエルゴメーター運動という周期性をもつ運動において、活動する筋群の経時的な順序に類似性を認めたことから、歩行の代用的な練習手段として、エルゴメーター運動は有効であると考えられた。しかし、二関節筋や、前脛骨筋などで活動パターンの相違があり、経時的には類似な活動をしていても、異なった神経調節がなされていると考えられ、今後の検討が必要である。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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