理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: MO038
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義肢・装具
当院の回復期リハビリテーション病棟における脳卒中片麻痺患者の装具作製の現状と今後の課題
*渡邊 亜紀辛嶋 美佳尾方 英二梅野 裕昭黒瀬 一郎高橋 朋子隈田 美鶴上田 直樹福井 啓介前田 哲志北野 留美子佐藤 浩二衛藤 宏
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抄録

【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)の目的はADL能力の向上による寝たきり予防と家庭復帰とされている。当院は平成12年5月に回復期リハ病棟1病棟(60床)開設し、平成14年2月と7月にそれぞれ1病棟(各60床)を増設、現在3病棟180床で運営している。回復期リハ病棟開設からの約2年半をふり返り、早期の立位姿勢でのADL能力の向上、実用歩行の獲得に向けた脳卒中片麻痺患者に対する装具作製の現状と今後の課題をまとめたので報告する。【装具作製の流れ】入院当日、医師が病棟で評価を行う場に理学療法士も立会い装具の必要性を検討する。必要があればこの時点で患者、家族に装具のオリエンテーションを行う。入院翌日、装具作製内容がセラピストの主観的なものにならないよう複数のセラピストで内容の検討を行い、入院から1週間以内に装具の採型を行う。また、経験年数の差をなくし、より適した装具を作製する目的で2週間に1回はリハビリ専門医のもとで装具カンファレンスを実施している。採型から完成までの期間は、プラスチック短下肢装具(以下、PAFO)では1週間、金属支柱付き短下肢装具(以下、金属支柱)は2週間、長下肢装具では2週間から3週間を要す。【当院の装具作製状況】回復期リハ病棟開設前の平成11年度は年間作製本数114本中、約93%がPAFOであった。しかし回復期リハ病棟開設以降、徐々に金属支柱や長下肢装具の作製が増加し、3病棟となった平成14年7月から10月の作製本数59本中、金属支柱は57.6%、長下肢装具は27.1%、PAFOは15.3%であった。入院から採型までの平均日数は、平成11年度は35.5±35.4日であったが平成14年10月時点では10.4±14.4日と有意に短縮された(t=4.95、P<0.001)。【考察】これまで、脳卒中片麻痺患者の装具作製タイプはPAFO主体であったが、回復期リハ病棟開設以降、金属支柱や長下肢装具へと変化し、採型までの日数も早期化した。これは治療用装具としての活用に加え、本病棟の目的達成に向けては、車椅子から脱却し、早期から立位姿勢での活動を高める必要性が認識でき、その手段として金属支柱や長下肢装具が有効であることを学んだ結果であると考える。 今後の課題は、1.屋外は金属支柱を用い、屋内は裸足歩行を基本として、下肢機能面の維持、管理のための自己訓練を徹底すること、2.金属支柱の短所を理解した上で長所を生かし、退院後の実生活に即した装具の使用方法をきめ細かく指導すること、3.退院先の地域や施設で関わるセラピストと装具に対する認識を深め合い連携を図ることである。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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