理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: MO036
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義肢・装具
脳梗塞片麻痺患者における前面支柱型短下肢装具による静止立位重心動揺及び下肢筋活動に及ぼす影響
*木村 篤史冨田 健一内藤 仁美永山 智貴松本 和久勝見 泰和
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抄録

【目的】 個々の患者が有する身体的問題に対して、装具の一般的な分類上での装具作成では患者固有の身体的問題点を解決する事が困難であることが多く、患者の病状に応じたよりカスタマイズされた装具の作成をする事が望ましい。今回、整形外科的問題を抱える脳梗塞左片麻痺患者を対象に前面支柱型短下肢装具による静止立位重心動揺と下肢筋活動に及ぼす影響を調べる事を目的に本研究を行ったので報告する。【対象】  脳梗塞左片麻痺、慢性関節リウマチの診断を受け、左上下肢不全麻痺、両足部の凹足変形、右下垂足を有する83歳女性1名である。理学療法開始時の問題点は(1)右足関節の下垂足(2)足部凹足変形による荷重時の前足部痛(3)両側膝関節屈曲拘縮(4)両側下肢支持性の低下であった。これに対し前面支柱型短下肢装具を作成し理学療法を実施した。本装具の特徴は(1)下肢支持性が低下している本症例でも前面支柱型にすることにより脛骨前面での体重支持を容易にする(2)脛骨前面での支持に対して脛骨前面部を保護するために前面支柱との接触面にシリコンパットを内蔵する(3)装具足部に足底挿板を装着する事で荷重時の前足部の疼痛を軽減させることである。【方法】 本症例に対して前面支柱型短下肢装具の装着・非装着それぞれについて20秒間の開眼時静止立位重心動揺及び左右大腿四頭筋、大腿二頭筋、腓腹筋、前脛骨筋の筋活動を表面電極により導出した。計測は装具装着・非装着それぞれについて合計8回(2日以上間隔をおき合計4日、1日に装具装着・非装着2回ずつ)重心動揺の評価項目は(1)総軌跡長(2)X方向軌跡長(3)Y方向軌跡長(4)X方向最大振幅(5)Y方向最大振幅の4項目とした。【結果】 重心動揺について総軌跡長、X方向軌跡長、Y方向軌跡長、X方向最大振幅において非装着時に対し装着時では減少していた。一方Y方向最大振幅は非装着時に対し装着時ではわずかに増加していた。下肢筋活動について右腓腹筋を除き全ての筋で非装着時に対し装着時では筋活動は減少していた。【考察】 重心動揺は前面支柱型短下肢装具の装着により減少し同時に下肢筋活動も減少傾向にあった。これは前面支柱パットへの脛骨の押し込みを意識させる事で踏み込みの方向を一定にし足継ぎ手での体重支持を効率よく行う事ができたことによるものと思われた。それに伴い下肢筋活動低下傾向を示したのは、前面支柱パットへ脛骨を介してもたれこむことでパットからの反作用により膝伸展方向への支持力が生じ下肢筋の活動性が低下したものと思われた。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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