理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: MO035
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義肢・装具
脳卒中片麻痺症例に対するDream Plastic AFO使用時の底屈トルク変化と歩容の関係について
*谷本 健赤松 学宇都宮 剛森中 茂
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抄録

[目的]Dream Plastic AFO (オルソ社製)は足継ぎ手に摩擦による底屈制動システムを搭載した下肢装具である。その特長は立脚後期の足関節背屈角度を底屈抵抗により保持し、遊脚期へ移行させることである。我々は本装具装着による歩容の変化について第37回の本学会で報告した。今回、脳卒中片麻痺症例に対して底屈抵抗の強さを3段階に変化させて歩容の変化を観察し、適正な底屈トルク値について考察した。[対象]今回、本装具使用例として脳卒中片麻痺症例2名について観察を行った。症例1は66歳の女性で、脳出血による左片麻痺である。発症後10年でBr stageは上肢III、下肢Vであり、歩行時の立脚中期に左側反張膝がみられた。症例2は78歳の男性で、脳梗塞による左片麻痺である。発症後1年でBr stageは上肢III、下肢IVであり、歩行時の足先離地期に左側足尖の躓きがみられた。 [方法]底屈トルク値は低トルクが2.0Nm、中トルクが2.7Nm、高トルクが3.4Nmとなるように設定した。現在、各症例が使用している本装具のトルク値は中トルクと同程度で、その前後を低・高トルクとして任意に決定した。各底屈トルク値における歩容を60Hzのデジタルビデオカメラ画像での観察とZebris社製foot printによる足圧中心軌跡の推移を測定した。歩行は本装具と靴を装着し一本杖使用による自由歩行とした。[結果]症例1は、中トルクによる歩容が最良であり左側立脚中期の反張膝が消失した。底屈トルク値が高くなるほど下腿シェルによる下腿の前方押し出しが起こり、反張膝の消失は明らかであったが膝崩れや違和感の訴えがあった。低トルクでは反張膝が著明に出現した。症例2は、高トルクによる歩容が最良で足先離地期の足尖の躓きが消失した。底屈トルク値が低いほど足先離地期での躓きが著明であった。足圧中心軌跡は高トルクで外側に弧を描きながら母趾球側へスムーズに移動した。底屈トルク値が低いほど踵接地から足底接地期に膝関節が過伸展し重心が一瞬後方に戻り、立脚中期で重心の前方移動とともに膝関節が軽度屈曲してくるため足圧中心軌跡は中足部付近で一度後方へ戻り、再び前方へ移動していた。[考察]症例1は底屈トルク値を高くすることで踵接地から足底接地期に下腿シェルによる下腿の前方押し出しが起こり、立脚中期に膝関節の屈曲を誘導するため反張膝が消失したが、トルクが高すぎると膝崩れが出現してくるため、反張膝が抑制される最小値にトルクを設定する必要があったと考える。症例2はトルク値を高くすることで立脚後期の足関節背屈角度を保持した状態で遊脚期へ移行するため足尖の躓きが消失したと考える。足圧中心軌跡は、下腿シェルによる下腿の適度な押し出しにより重心の前方移動が誘導され、スムーズな軌跡になったと考える。今回、各症例に適した底屈トルク値は異なる結果となったが、このように底屈トルク値を変化させながら各症例に対処していきたい。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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