理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: LO435
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スポーツ
腰痛発症に関わる下肢の身体的要因について
*伊藤 浩充小野 玲前田 有美若狭 真妃佐浦 隆一平田 総一郎
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キーワード: 腰痛, 筋硬度, 非対称性
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抄録

【はじめに】スポーツによる腰痛は、腰椎の器質的病変、体幹筋群や大腿筋群などの筋力低下・筋力imbalanceを主要な原因としてあげられることが多い。また、これらの要因に作用する他の身体的素因があることも十分考えられる。すなわち、大腿筋群や下腿筋群の筋硬度や足関節の関節可動域の左右差などのように両下肢の左右のimbalanceが腰痛の発症に関わっていることも十分考えられる。そこで、本研究では、スポーツ活動に伴う腰痛発症に関わる下肢の身体的要因について分析し、その特徴を明らかにすることを目的とする。【対象と方法】対象は、定期的なフィジカルチェックにおいて調査に同意を得た某高校男子サッカー部74名である。これらの対象者について、大腿四頭筋・ハムストリングス・腓腹筋の筋硬度(株式会社井元製作所製筋弾性計PEK-1を使用)、足関節の背屈可動域、足部の内側縦アーチ高率、後足部の静的アライメント、走行時の足部・膝関節のダイナミックアライメントを評価した。評価は学年最初の4月中に行った。そして、その後1年間における腰痛発生を調査した。腰痛症状を有した者(腰痛群)と、そうでなかった者(非腰痛群)との間で比較検討た。統計学的分析には2群間の対応なしのt-検定、カイ2乗検定およびロジスティック回帰分析を用い、危険率5%を有意と判定した。なお、明らかな外傷による腰痛発症者は腰痛群として扱わないこととした。【結果】対象者のうち腰痛を訴えた者は13名であった(腰痛群)。筋硬度において、腰痛群と非腰痛群との間に有意な差が認められたのは、腓腹筋の左右差であった。その他の測定項目においては両群間に有意な差は認められなかった。また、後足部の静的アライメントや走行時のダイナミックアライメントとの関連性も認められなかった。ロジスティック解析では、腓腹筋の筋硬度左右差でodds比1.496が導き出された。【考察】今回の研究では、下肢の構造や筋群などの左右対称性に着目した。これらの非対称性が腰椎への左右片側偏重的負荷をきたし腰痛発生に関与するものと考えた。結果としては、統計的に明らかになったのは腓腹筋の筋硬度の左右差であった。このことは、下肢の荷重連鎖運動において下腿部のimbalanceが腰痛発症に間接的に関与したものと考えられた。また、統計的な有意は認められなかったが足関節背屈角度や大腿部の筋群、後足部の静的アライメントなどの左右非対称性においても腰痛発症に関与する傾向が認められていたので、これらについても今後検討を加えていく必要がある。また、腰痛発症に関わるその他の身体的要因についても調査検討を加えていきたいと考えている。このように考えると非外傷性腰痛発症の身体的要因は、身体各構造・機能の左右非対称性があり、しかも複数の要因が相互に影響し合って発症するのではないかと考えている。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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