理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: LO085
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スポーツ
野球選手の投球動作と足底圧との関係
肩・肘障害に与える影響について
*一色 房幸田村 達也呑口 理絵篠原 高文笹原 千佳渡部 幸喜
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キーワード: 野球, 投球障害, 足底圧
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抄録

【はじめに】野球選手にとって、肩・肘の障害は、避けて通る事の出来ない問題である。その為、肩甲上腕リズムや腱板の機能解析、筋力の比較検討等、上肢に関する報告は多数なされている。しかし「野球は下半身が命」と言われる様に、下半身の重要性は周知の如くである。そこで今回我々は、地面との接点である足底に着目した。そして、投球時の足底圧の変化を調べ、肩・肘の障害との関係を検討した。その結果、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は愛媛県立I高校野球部に在籍する1年生22名である。対象者全員に 1) 氏名2)年齢3)身長体重4)利き手5)野球歴6)現症7)既往歴8)投球時の注意点についてアンケート調査を行った。尚痛みのある者に対しては、問診によりその時期・程度を確認した。 足底圧の計測は、ニッタ社製のF-SCANにて、1コマ0.02秒で実施した。対象者には、セットポジションから出来る限り速いボールを投げる感覚で、シャドーピッチングを行ってもらった。そして、後踵が離れる瞬間を「0」とし、前足着地までのコマ数を測定した。後踵が離れる前に、前足が着地した場合は-(マイナス)で表示した。【結果】アンケート回収数22(回収率100%)。肩・肘に現在痛みがある者3名、今までに痛くなった事がある者13名(複数回答1名)の計15名(68.2%)であった。足底圧は、-2コマ3名、-1コマ2名、1コマ2名、2コマ6名、3コマ1名、4コマ4名、6コマ2名、9コマ2名であった。【考察】足底圧のコマ数を5段階に分類し、障害との関係を検討した。発生率としては、A群(-1コマ以下)60%、B群(0,1コマ)0%、C群(2,3コマ)71.4%、D群(4,5コマ)75%、E群(6コマ以上)100%であった。B群において、痛みのある者は認められなかった。前足が着地する瞬間は、下半身からの回転運動連鎖のスタートと考えられる。その時期に後足が回転を開始する事により、スムーズな運動連鎖が出来る為と考える。それに比べ、踵離れが早い群程、発生率も高い傾向にあった。踵離れが早くなると、体の開きも早くなり、肩関節が外旋位で早めにロックされる為と考える。逆に踵離れが遅いA群においても、60%の発生率があった。宮下らによると「ワインドアップ期に足部内側縦アーチの降下が強まるとコッキング期でknee-inが生じ、骨盤,体幹へと運動連鎖が乱れ、結果として加速期で肘さがりを呈する。」と述べている。つまり、前足着地後も後踵が着いている事により、回転エネルギーをブロックしてしまう。そして、運動連鎖に乱れを生じる事により、上体に頼った投法となる。その結果、肩・肘に悪影響を与えるのではないかと考える。 以上より、後踵の離れるタイミングは、肩・肘の障害に関係していると言えよう。そして、前足着地の瞬間まで、後踵が地面を捉えている事が重要であると考える。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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