理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HP253
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呼吸器疾患
当院におけるくも膜下出血開頭術後患者の術後肺合併症についての調査
術後肺合併症に関する因子
*渡邊 智之黒木 光村木 孝行重田 暁南谷 晶石田 暉
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抄録

【はじめに】脳血管障害(以下CVA)患者に対する、早期からの肺理学療法(以下CPT)介入による肺合併症の予防は、その他の合併症と同様に廃用症候群や全身状態の重症化を防ぐためにも重要といわれている。CVAの中でも、突発性くも膜下出血(以下SAH)は手術適応が高く、術後は脳血管攣縮予防を含む全身管理のため臥床期間が長くなることが多い。そのため理学療法の介入は他のCVAと比べて遅い。そこで、SAHを呈し入院した患者に術後早期からのCPTを中心とした理学療法介入の効果を検討する目的で、今回はまず患者カルテから後方視的に調査を行ない、当院での術後肺合併症発症の頻度と肺合併症の関与因子についていくつかの知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は2000年4月から2002年3月までの2年間にSAHを発症し入院した患者160名(男性63歳・平均年齢55.1±14.0歳・女性97名・平均年齢63.8±13.7歳)。調査方法は、患者カルテより後方視的に既往歴・重症度・人工呼吸器装着状況など23項目の調査を行い、肺合併症との関連性について検討を行なった。統計処理方法はχ2検定を用いた。【結果及び考察】対象160名中当院在院中の死亡は50例(31.2%)で、それらを除いた110名のうち術後肺合併症(+)群は38例(34.5%)であった。またPT介入日数は術後平均18.6±10.1日であった。統計の結果、既往歴・重症度に術後肺合併症との関連はなく、術後14日目JCS・人工呼吸器の有無・在院日数に強い関連性(p<0.005)を示した。また、術後1日目及び7日目JCS・人工呼吸器装着期間においても関連性(p<0.05)が認められたことから、術後の意識レベル・全身状態が、肺合併症の発症に影響していることを示唆しており、術後に意識レベル改善の遷延や人工呼吸器管理が生じた場合、肺合併症を引き起こす可能性が十分にあると考えられる。これらから、より早期にPTが介入することが、術後肺合併症の予防に有効と考える。今後は早期介入に伴うリスク、及びそれをふまえた理学療法実施内容の選択について明確にしていきたい。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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