理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BO458
会議情報

運動・神経生理
転倒の筋電図学的分析
*南澤  忠儀鈴木  克彦山口 峻司
著者情報
キーワード: 転倒, 姿勢制御, 筋電図
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[目的] 転倒は外乱によって誘発される場合と姿勢制御系の破綻によって誘発される場合が考えられる。本研究では後者すなわち制御系の破綻によって起こる転倒について筋電図学的及び運動学的解析をおこなった。 [方法]対象は健常成人5名(22_から_38歳)。被験者の身体に反射テープを張り(部位:第五中足骨・踵骨隆起・腓骨外果・大転子・肩峰・耳垂)、身体側面からビデオ撮影(30コマ/秒)を行い、その画像の各点を直線で結びスティックピクチャー図を作成した。また、表面筋電図法により、前脛骨筋(TA)・腓腹筋内側頭(GM)・腓腹筋外側頭(GL)・ヒラメ筋(SO)・大腿二頭筋(BL)・大腿直筋(RF)から筋活動を計測した。被験者はフォースプレート上に置かれた半径90_mm_、高さ100mmのロッキングプラットフォーム(以下、シーソー)上で閉眼立位姿勢をとり、可能な限り転倒せずに姿勢を維持するように指示した。実験は、はじめに開眼で15秒間4回を行い、次いで閉眼で15秒間4回の実験をおこなった。姿勢の維持が困難になり左右のどちらかの下肢がシーソーから離れて床面に着地した時点を転倒としその時点までの運動と筋電図を解析した。[結果]シーソーから前方あるいは後方へ転倒する時の下肢の踏み出しは左下肢を踏み出す場合が多かった(4名の被験者で138回中125回)。前方に転倒する直前では、両下肢のGM・GLが筋活動を示した。その大きさは支持下肢のほうが踏み出し下肢に比べて高かった。支持下肢ではSOにも強い筋活動が観察された。姿勢が維持されている状態から転倒に移行する時期では、踏み出し下肢のGMの活動が目立っていたが、GL及びSOには強い筋活動は見られなかった。[考察]支持下肢での強いGL・GMとSOの筋収縮は関節を安定させることで崩れようとする姿勢を安定させるための対応と考えられる。その後、踏み出し下肢が前方へ着地しようとした際もやはり同様にGM・GLとSOの強い筋活動が観察された。これも同様の理由によるものと考えられる。姿勢を崩す前の段階ではのちの踏み出し下肢はすでにのちの支持下肢ほどGL及びSOの筋活動が見られず、これは不安定な状況に対して転倒を予測して予めどちらかの下肢に重心をかけて踏み出し下肢を決めて準備をしていたのではないかと考える。

著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top