1980 年 17 巻 3 号 p. 152-158
前2報においては, 全期間舎飼い条件におかれた場合の排ふん場所が, 隣豚房および豚房構造との関係においてどのように影響されるかを調査した。今回は, 運動場付き豚房での排ふん行動と, 外的要因との関連について実験を行ない次のような結果を得た。
1. いつでも運動場に出られる条件の豚房では, 豚は豚房内で排ふんするよりも戸外に出て排ふんする方を好む習性がある。この理由としては, 戸外の運動場は, 天候, 音, 人畜の通過など豚房内より不安定要因が多いため, 豚は安心感に富む豚房内を安息区域とし, 運動場を遊びと排ふん場所にあてるように本能的に使い分けているものと考えられる。しかしながら, 不安条件も度がすぎて, 強風が吹き荒れたり, はげしい雨など豚に明らかに恐怖心ないしは過度の不快感をいだかせる状態になった場合は, 豚は戸外に出ることをためらい, 豚房内での排ふんが多くなる。
2. 冬季におけるなだらかな気温低下には豚はよく順応してゆくが, 気温が急冷した日には戸外に出ることをおっくうがり, 豚房内で排ふんする割合が多くなる傾向が見られた。
3. 冬季と夏季とを比較すると, 冬季は多少なりとも毎日豚房内に排ふんが見られたが, 夏季は豚房内に排ふんが全く見られない日の方が多かった。その理由として, 夏は豚が豚房全面に散らばって臥るのに対して, 冬は保温のために1ヶ所に体を寄せあって臥るため排ふんを誘うようなスペースが豚房内に出来ることも一因と考えられる。
4. 或る個体が下痢して豚房内をよごすと, 他の豚もそれにつられて豚房内で排ふんする様子が観察された。この現象は, 豚房内を努めて清潔にしておくことによって豚房内への排ふんを抑止するという一種の学習効果が期待できることを意味するものと考えられる。
5. 運動場がある場合は, 豚房の広さや構造は排ふん行動に対して影響が小さいような結果が得られたが, 透視できる仕切柵の向いがわの隣房豚を常時とじこめて豚房内で排ふんせざるを得ない状態を作ってやると, それにつられてこちら側の豚群も豚房内にかなりの排ふんをするようになった。したがって, 戸外へ排ふんを集中させたい場合は, 豚房間の仕切柵はすべて透視できない構造にすることが望ましい。