日本養豚研究会誌
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鹿児島バークシャーの肉質特性と評価技術に関する研究
V. 背部皮下内層脂肪と腎臓周囲脂肪の一般化学的組成および理化学的特性について
川井田 博奥薗 義美福元 守衛楠元 薩男宮内 泰千代加香 芳孝小島 正秋
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1979 年 16 巻 3 号 p. 240-248

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抄録

鹿児島県畜産試験場養豚部で育成された鹿児島バークシャー (去勢6頭, 雌5頭), アメリカバークシャー (去勢6頭, 雌6頭), ハンプシャー (去勢6頭, 雌6頭) の計35頭の供試豚より得られた腰椎部背部皮下内層脂肪 (HI) と腎臓周囲脂肪 (LF) について, 特に脂肪組織の一般化学的組成および理化学的特性について, 品種別, 性別, と殺体重別に差の有意性べを調るためにF検定を行って比較検討した。
まず, HIとLFの一般化学的組成について品種別にみるとHIの粗灰分を唯一の例外として, 鹿児島バークシヤーとハンプシャー, アメリカバークシャーとハンプシャーの間に有意差が認められ, 水分, 粗灰分, 粗蛋白質の割合においては, ハンプシャーが最も多く鹿児島バークシャーが最も少ないという傾向が認められた。これに対して粗脂肪の割合は, これとは逆の結果が得られた。以上の結果から推察すると, ハンプシャーは赤肉量が多く脂肪の量が少ない品種であり, 一方鹿児島バークシャー, アメリカバークシャーは脂肪量の多い品種であると言われていることを裏付けているものと思われる。
性別にみると, HI, LFにおいで3品種とも水分, 粗灰分および粗蛋白質の割合は, 雌〈去勢雄であり, 粗脂肪の割合では逆に雌〉去勢雄であった。
体重別にみると, 3品種ともHI, LFのいずれも体重の増加とともに水分, 粗灰分, 粗蛋白質は少なくなり, 粗脂肪は多くなる傾向が認められた。これは, 体重の増加とともに水分は脂肪に置換されていくためであると思われる。
次に脂肪の理化学的特性については, 特徴的な点をあげると, 品種別にみる時鹿児島バークシャーのHIが他の品種よりも沃素価は低く融点は高い値を示し品質として優れていると思われた。またハンプシャーは, HIおよびLFのいずれにおいても融点が非常に低く, 脂肪が軟らかいことが推察される。体重別では, 3品種とも体重が増加するにつれてHI脂肪のケン化価がやや高くなり, HI, LFの脂肪融点は低くなる傾向が認められる。これは体重の増加とともにHI中に低級脂肪酸が多くなり, HI, LFはやや軟らかくなることを示している加様に思われた。今後脂肪酸組成を分析し, さらに詳しく追求していく考えである。

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