日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8C11-3
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ATPによる高分子化合物の消化管粘膜透過性亢進作用:プリン物質及び吸収促進剤を用いた検討
*木下 奈津美高橋 幸一水野 亘恭
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抄録

【目的】ATPは消化管上皮細胞において細胞内から細胞外に分泌され、受容体と結合することによりイオンの輸送に関与していることが報告されている。そこで我々は、このATPの消化管上皮細胞への作用が薬物の吸収にも影響を及ぼすのではないかと予想し、難吸収性のモデル高分子化合物FITC-Dextran 4,000(FD-4)の吸収について検討を行った。その結果、ATPがFD-4の吸収を促進することを明らかにし、日本薬学会123年会で報告した。今回はATP以外のプリン物質及び吸収促進剤を用い、ATPによる作用と比較検討した。
【方法】in situ 吸収実験:ウレタン麻酔下Wistar/ST系雄性ラットの回腸部分に約5cmのル-プを作成した。このル-プ内にプリン物質及び吸収促進剤の存在下、非存在下においてFD-4溶液を投与した。経時的に頚静脈より血液を採取し、蛍光光度計を用いてFD-4の血中濃度の定量を行った。また腸管内でのATPの分解性については、腸管内溶液を回収し、HPLCにより測定を行った。
【結果及び考察】FD-4の血中濃度は、ATPの同時投与によって一時的な上昇が認められた。さらにこの上昇は、ATP濃度に依存して増大した。このATPの作用は、プリン受容体の拮抗剤であるSuramin及びPPADSを併用することにより消失した。これらの結果より、ATPはプリン受容体を介して、高分子化合物の消化管粘膜透過性を亢進しているものと考えられた。次に、吸収促進効果が報告されている物質を用いて同様の検討を行った結果、いくつかの物質においてSuraminで促進効果の消失が観察され、これら吸収促進剤においてもプリン受容体関与の可能性が示唆された。ATP以外のプリン物質についても同様の検討を行った。

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© 2003 日本薬物動態学会
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