2024 年 34 巻 2 号 p. 88-92
コバレントドラッグは標的タンパク質と不可逆的に結合し、強く持続的な薬効を示す。近年、システイン残基を狙ったコバレントドラッグ創薬が隆盛だが、標的可能なタンパク質は限られている。コバレントドラッグ創薬における“Beyond cysteine”は重要な課題であり、特にプロテオーム中に豊富に存在するリジン残基を狙うことで、大幅な標的拡大が期待できる。しかし、生体内での高い安定性とアミン選択性を兼ね備えた求電子基の欠如が、リジン標的創薬の障壁となっている。筆者らは、新たなアミン反応性求電子基として、2-シアノアレーンスルホンアミド(CNS)を見出した。CNSは優れた水中安定性を示し、環鎖互変異性を伴う新規な機構で化学選択的にアミンをラベル化する。本稿では、CNSの反応性プロファイルや、熱ショックタンパク質90のLys58を狙ったコバレントドラッグへの応用について紹介する。