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タイヤ由来化学物質から生じるキノンはレドックス活性を有するか?
安孫子 ユミ
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キーワード: PPD, キノン, 酸化, 大気汚染, PM2.5
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2023 年 59 巻 4 号 p. 332

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抄録

自動車タイヤなどのゴム製品にはゴムの酸化による亀裂や老化を防止するためにp-phenylendiamine誘導体(PPDs)が添加されている.環境省によると,2012年にはPPDsの1つであるN-(1,3-dimethylbutyl)-Ń-phenyl-p-phenylendiamine(6PPD)が,ゴム製品製造業を介して大気中へ3.4t排出されている.6PPDは,アメリカの都市部の川を遡上してきたギンザケが激しい雨の後に大量死した事件の原因物質として同定された6PPDキノン(6PPD-Q)の親化合物として2021年のScience誌に報告され,その名が広く知られるようになった.PPDsはタイヤおよびその削り滓から溶出し,環境中でオゾンなどにより酸化されてPPDキノン(PPD-Qs)となり,大気中微小粒子(PM),表面流出水および道路脇の土壌から検出されている.レドックス活性を有するキノン化合物は,活性酸素種の産生を介して生体影響を引き起こす可能性がある.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Tian Z. et al., Science, 371, 185–189(2021).
2) Cao G. et al., Environ. Sci. Tech., 56, 4142–4150(2022).
3) Wang W. et al., Environ. Sci. Tech. Lett., 9, 712–717(2022).
4) Daellenbach K. R. et al., Nature, 587, 414–419(2022).

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© 2023 The Pharmaceutical Society of Japan
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