ファルマシア
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Aβ凝集阻害物質における活性差異の探索方法
外山 友美子
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2023 年 59 巻 1 号 p. 69

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抄録

超高齢社会を迎える我が国においてアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)の克服は差し迫った課題の1つであり,治療薬の需要は極めて高い.AD患者脳の病理学的特徴に老人斑が挙げられ,老人斑の主な構成分子として42個のアミノ酸配列から成るアミロイドβタンパク質(amyloidβprotein: Aβ42)の存在が広く知られている.Aβ42は凝集性が高く,Aβ42の凝集は神経細胞に対して毒性を示す.このことから,Aβ42の凝集はAD発症に大きな影響を及ぼすと考えられ,AD治療の戦略としてAβ42の凝集阻害は有望なアプローチであるといえる.
既に複数の漢方薬が,ADの臨床症状に対して有効性を示すことが報告されている.漢方薬は複数の生薬から作られるため,単一の有効成分の分離や同定は困難であることに加え,それらの漢方薬におけるAβ42凝集阻害に働く有効成分や,その構造に着目した作用機序の報告例は限られている.
本稿では,Hanakiらが開発した液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography mass spectrometry: LC-MS)と主成分分析(principal component analysis: PCA)を組み合わせた統計手法について紹介する.本手法は,Aβ凝集抑制能を持つ活性成分の探索を目的としている.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Selkoe D. J. et al., EMBO Mol. Med., 8, 595-608(2016).
2) Matsumoto K. et al., J. Pharmacol. Sci., 122, 257-269(2013).
3) Hanaki M. et al., Bioorg Med. Chem., 61, 128613(2022).
4) Sato M. et al., J. Biol. Chem., 288, 23212-23224(2013).

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© 2023 The Pharmaceutical Society of Japan
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