ファルマシア
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NUDT15変異に準じたメルカプトプリン治療の投与量設計
歌野 智之
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2019 年 55 巻 3 号 p. 257

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抄録

急性リンパ性白血病の治療薬であるメルカプトプリン(mercaptopurine: MP)は,臨床効果や有害事象の個体差が大きいことが知られている.個体差の原因として,thiopurine S-methyltransferase(TPMT)の遺伝子多型の存在が報告されたが,我が国ではTPMT変異のアレル頻度は低く,個体差の原因を説明することはできなかった.そのような状況の中,2015年にYangらは小児白血病患者において,新たなMPの個体差に関わる因子として,nudix hydrolase 15(NUDT15)の遺伝子多型を報告した.NUDT15はMPの活性代謝物であるthioguanine triphosphate(TGTP)を脱リン酸化する酵素であり,NUDT15変異例は酵素活性が低く,TGTPが増加しMPの感受性が高いことが示唆されている.しかし,NUDT15変異例に対して,治療効果を減弱せずにどの程度MPを減量すべきか不明であった.本稿では,Nudt15変異マウスを作製してMP投与量別に有効性や毒性を検証した論文を紹介する.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Weinshilboum R. M. et al., Am. J. Hum. Genet., 32, 651-662(1980).
2) Yang J. J. et al., J. Clin. Oncol., 33, 1235-1242(2015).
3) Nishii R. et al., Blood., 131, 2466-2471(2018).

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© 2019 The Pharmaceutical Society of Japan
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