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万能輸血液創製を目指して:EABaseグリコシダーゼの分子進化工学的改変
山本 啓介
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2015 年 51 巻 12 号 p. 1179

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抄録

「O型血液は他の血液型の人間に輸血できるが,他血液型の血液をO型の人間が受血することはできない」.ABO血液型は赤血球上の糖鎖抗原の構造により決定される.上記の輸血の授受の方向性は,O型血液には誰もが保有するH型抗原しか存在しないことによる.実際,大量出血などの緊急時にO型赤血球を輸血することはよくあると聞く.このように需要の多いO型輸血液の不足に備えるため,これまでにA型またはB型血液をグルコシダーゼで処理し,H型抗原の「万能輸血液」(=O型血液)へ変換する研究がなされてきた.しかし,この方法ではA型,B型血液それぞれに別のグルコシダーゼを大量に作用させる必要があるため,簡便に「万能輸血液」を調製できる方法が現在も模索されている.
なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
1) Goldstein J. et al., Science, 215, 168-170 (1982).
2) Liu Q. P. et al., Nat. Biotechnol., 25, 454-464 (2007).
3) Anderson K. M. et al., J. Biol. Chem., 280, 7720-7728 (2005).
4) Higgins M. A. et al., J. Biol. Chem., 284, 26161-26173 (2009).
5) Kwan D. H. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 5695-5705 (2015).

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© 2015 The Pharmaceutical Society of Japan
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