民族學研究
Online ISSN : 2424-0508
女たちの社会関係の論理 : 一夫多妻社会バンバラの事例(マリ共和国)
保坂 実千代
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1995 年 60 巻 1 号 p. 1-31

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抄録

本稿では,一夫多妻社会に生きるバンバラの女たちが,女性の社会関係を彼女たちの論理によってどのように捉えているかについて考察する。女性の社会的行為をきめる規準となるのは,切り替え可能な2つの立場(チェラシギムソとソデン)であり,この2つの立場の関係づけが,女性の社会関係の論理の要になっている。チェラシギムソとしての女性とソデンとしての女性は,儀礼の際には,一夫多妻家族のなかで明確に対比させられており,一夫多妻家族のもつ,組織の一体性を強調する表向きの側面と,分裂の要因として表に出せれることのない側面のそれぞれに対応させられている。一夫多妻家族をこのような2つの側面で操作するのは男性の論理であるが,表には出ないソデンたちの間では,女性の論理が表れてくる。男性の論理と女性の論理とでは「バデンヤ(同母兄弟であること)」概念の使い方が異なることを指摘しながら,女性の社会関係を分析する。

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© 1995 日本文化人類学会
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