今日の先住民のアートやクラフトにおいて、「オーセンティシティ」は作品のスタイルや形式から導かれる正統性にもまして、正しい作り手との結びつきを示すものになりつつある。ただし生産物に排他的な作者を想定するこの傾向は、グローバルに浸透する知的財産の観念と親和的である。本稿では、文化創意産業(文化クリエイティブ産業)に参与し始めた台湾の先住民セデックを対象に、かれらが織りと服飾品生産を通じて、生産物と唯一の作り手の結びつきを根拠とするオーセンティシティをいかに受け入れ、遂行し、変形させうるのかを検討する。その結果本稿は、言説として構築されるオーセンティシティから、モノの製作を通じて「成形」されるオーセンティシティへと視点を移す必要があること、それによって、フィールドの人々が特定のモノを作ることで「支配的な分類」を遂行し、またその分類を作り変え、新たな価値を作り出そうとする創造的営みに光を当てうると主張する。