本発表ではモビリティと物質性の人類学について、特に海上の船舶から考えていく。19世紀以降、動力炉つきの鋼鉄船が大量に生産され、海上交通インフラが整備されてきたが、そうした中で人類学は遠く最果ての海にて独特の形をした木造船や木のカヌーについての研究を蓄積してきた。カリブ海のモスキート海岸でもこうした木造船が現存し、そこで暮らすミスキート・インディアンの村落ではアオウミガメ漁のための漁船が新たに誕生していることが調査の結果わかってきた。ミスキートによる簡素な道具を使っての建材や造船方法は特筆すべきもので、英領ケイマン諸島から伝播する以前の船と比較した所、有意な相違が見られる結果となった。