日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-69
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ポスターセッション
血清ペプチドミクス解析によるIgA腎症の診断マーカーの探索
*金城 永幸小板橋 賢一郎Yang Xiang永井 宏平黒川 真奈絵岡本 一起有戸 光美増子 佳世遊道 和雄安田 隆末松 直也木村 健次郎加藤 智啓
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抄録

【目的】 現在、IgA腎症の確定診断は、腎炎症候に加え、腎生検でのメサンギウムにおけるIgA免疫複合体の沈着の確認である。しかし、腎生検は患者の身体的、精神的な苦痛を伴う。そのため、より簡便で侵襲性の低い診断方法の確立が求められている。今回、IgA腎症の診断マーカーとなりうる血中ペプチドの探索を目的として、未治療のIgA腎症患者の血清を用いた網羅的なペプチドミクス解析を行った。【方法】26名のIgA腎症患者および25名の健常者の血清から、弱陽イオン交換磁性ビーズ(MB-WCX, Bruker Daltnics社)を用いてペプチド(~7kDa)を回収し、MALDI-TOFによって検出した。次に、検出されたペプチドイオンのピーク面積データを用いて、Orthogonal-partial-least-squares判別分析(OPLS-DA)を実行し、IgA腎症患者群と健常人群を判別するモデルの作成を試みた。作成されたOPLD-DAモデルの判別予測力は、7分割の交差検定にもとづいたQ2値によって評価した。[結果と考察] MALDI-TOF解析によって、IgA腎症患者および健常人の血清から97本のペプチドが検出された。これらのペプチドの定量情報を用いてOPLS-DA解析を試みたところ、IgA腎症患者群と健常人群を完全に分離する予測力の高い判別モデルが作成された(R2 = 0.92, Q2 = 0.861)。97本のペプチドの内、IgA腎症患者群で有意に増加する5本 (m/z 2951.24, 5907.91, 5865.34, 3240.43, 2659.80, p < 0.01)と、有意に減少する1本(m/z 1778.80, p < 0.01)のペプチドが、両群の判別に特に有効であることが示され、この6本のペプチドの定量データのみを用いても、十分に予測力の高い判別モデルを作成することが出来た(sensitivity = 0.96, specificity = 0.96, R2 = 0.807, Q2 =0.790)。これら6本のペプチドはIgA腎症の診断マーカーとして有用であると考えられた。現在、これらマーカー候補ペプチドの同定および、IgA腎症の病態との関わりについての解析を進めている。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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