日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-66
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ポスターセッション
C型肝炎ウイルス由来の原発性肝細胞癌の高感度バイオマーカー探索
*久我 佳菜子曽川 一幸佐藤 守川島 祐介松下 一之小寺 義男朝長 毅前田 忠計野村 文夫
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抄録

【背景】 本邦における原発性肝細胞癌の8割はC型肝炎ウイルスによる慢性的な肝障害に起因しており、C型肝炎ウイルスへの推定罹患者数は200万人と言われている。肝細胞癌に特異性の高い腫瘍マーカーとしてAFP・AFP-L3・PIVKA-_II_が有用とされているが、腫瘍マーカー単独での早期癌の検出率は非常に低く、確定診断には超音波検査等の画像診断や、患者への負担の大きい肝生検を必要としているのが現状である。超音波検査による小病変の拾い上げは検者の熟練度に左右されやすく、絶対的なものではない。したがって早期診断、治療方針の検討を行う上で、侵襲性が低く、簡便である血液を用いた検査として、高感度な新規腫瘍マーカーの発見が望まれる。
【方法】 血清プロテオーム解析の問題点として、「存在量の多いタンパク質の除去」・「キャリアータンパク質に結合しているタンパク質の抽出」等が挙げられる。この問題点を解決した方法として、北里大学で開発されたペプチド抽出法(K法)がある。K法はアセトン沈殿法や限外ろ過膜法に比較して低分子量タンパク質及びペプチドの抽出効率及び再現性に優れ、またアルブミン等のキャリアプロテインに結合している成分の抽出も可能にしている。 C型肝炎ウイルス感染をバックグラウンドに持つ原発性肝細胞癌患者及び肝硬変患者血清と健常者血清各5例に応用した。 血清中のペプチド成分を抽出し、逆相HPLCで分画後、各フラクションをMALDI-TOF MS(AutoFlex II, Bruker Daltonics Inc)で比較解析した。
【結果・考察】 原発性肝細胞癌患者血清中で有意に増大しているピークを3本検出し、そのうち2ピークの同定に成功した。2ピークは同一のタンパク質の断片であり、肝細胞癌患者血清での報告がなされていないペプチドである。本ペプチドは原発性肝細胞癌の診断の新たな指標になる可能性があり、残り1ピークの同定と平行して、今後多検体での検討を進めていく。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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