日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-52
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ポスターセッション
翻訳後修飾を指標にしたマウス神経幹細胞の分化の運命づけを司る核内分子の探索
*新森 加納子鹿川 哲史森川 崇小林 大樹坪田 誠之緑川 宇一柏木 太一中尾 光善荒木 令江田賀 哲也
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抄録

神経幹細胞は自己複製能をもつと同時にさまざまな分化制御を受けながらニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトを作り出す能力を有する。神経幹細胞の未分化性維持や分化誘導の分子機構を明らかにすることは、脳の発生の基本的メカニズムの解明に寄与するとともに、神経疾患の新しい治療法開発の手掛かりとなることが期待される。これまで遺伝子発現プロファイリングによるアプローチで神経幹細胞の分化制御を司る仕組みについての知見は出つつも全容解明には至っていない。その理由の一つとして、分化・未分化の制御機構が、これまで深く探索されてこなかった蛋白質翻訳後修飾(リン酸化、分解、核移行など)により行われている可能性が挙げられる。本研究では、神経幹細胞の分化の運命づけに転写因子やクロマチン修飾因子を含む蛋白質の翻訳後修飾が関わっていると仮定し、2D-DIGE法を含む最新のプロテオミクスの手法を取り入れた核蛋白質の解析を行った。胎生14日目のマウス終脳から単離した神経上皮細胞を単層培養する際に、神経幹細胞の自己複製にはたらく線維芽細胞増殖因子(FGF2)を添加して神経幹細胞を得た神経幹細胞の培養系からFGF2の除去と再添加を行った後、核蛋白質を分画し、異なる蛍光標識を施して2D-DIGEを行い、画像プロファイルを比較定量解析した。その結果、pH3-11, 24 x 20cm のゲルで検出された4095個の核蛋白質スポットのうちFGF2刺激により量が変化した18個のスポットを認めた。ProQDiamondで染色した結果、18個中11個はリン酸化蛋白質であった。これらの蛋白質スポットはnanoLC-QQTOF MSにより同定され、核移行やクロマチン修飾、あるいは転写調節など核内動態に関与する因子を含んでいた。これらの結果は、プロテオミクスの手法は神経幹細胞の運命決定を調節する仕組みを解明する方法として有効であることを示唆しており、同定された分子の機能解析を行っている。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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