日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-36
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ポスターセッション
2DICAL法にて発見された新規血液バイオマーカー
*尾野 雅哉松原 淳一本田 一文佐久間 朋寛橋口 朋代能勢 博増田 万里高倉 美智子下重 美紀桑原 秀也正路 章子廣橋 説雄山田 哲司
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抄録

われわれが開発した2DICAL法(2-Dimensional Image Converted Analysis of Liquid chromatography and mass spectrometry)は、無標識サンプル間比較解析が可能なシステムであり、多数検体の比較解析が必要な臨床検体からのバイオマーカー探索に極めて高い能力を有している。このシステムを用いて、膵臓がん患者血漿と健常者血漿との比較から両群間で大きな差のあるペプチドを発見し、精密質量分析計による詳しい解析で新規の翻訳後修飾を解明し、さらにその構造に対する特異抗体を作成し、その存在を証明したので報告する。 コンカナバリンAによる前処理を施した膵がん患者38症例、対照健常者39症例の血漿のLCMS測定を行い、2DICAL法にて115325ピークから両群間でもっとも有意差のある6ピークを選別した。精密質量分析計を用いてペプチド配列、タンパク質同定を行ったところ、3ピークはプロリンが水酸化プロリンに変化したα-フィブリノゲンのペプチド配列由来であることが解明され、その変化はこれまでに報告のないタンパク質翻訳後修飾であることが示された。この結果を検証するために、この翻訳後修飾をもつ合成ペプチドを作成し、それに対する特異抗体を新規に作成した。この抗体はタンパク質の状態でのα-フィブリノゲンでも反応することが証明されたため、ウェスタンブロットを行い、2DICAL法で認められたのと同様に、膵がん患者血漿でこの翻訳後修飾のあるα-フィブリノゲンの発現が上昇していることを確認した。また、水酸化プロリンに変化したα-フィブリノゲンを産生する培養細胞をスクリーニングし、得られた培養細胞を用いてこの修飾を起こすプロリン水酸化酵素を同定した。 2DICAL法はタンパク質同定結果から解析する手法では不可能な新規のタンパク質翻訳後修飾を発見でき、多数件検体の解析を必要とするバイオマーカー探索に極めて有用な解析手法であることが示された。また、新規に発見されたα-フィブリノゲンの翻訳後修飾の臨床的、生理的、病理的意義については今後さらに検討していかなければならない。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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