日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第3回大会
セッションID: S102-13
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ES細胞のタンパク質のプロファイリングと機能解析
*吉里  勝利
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抄録

ホ乳動物の胚性幹細胞 (embryonic stem cell, 以下ES細胞)は、胚盤胞内に移植すると、ある割合で始原生殖細胞となり、その形質を次世代に伝えることが出来るため、発生生物学や再生生物学において重要な研究対象となっている。特に、DNA/RNA chipを用いたtranscrpitome解析によって、分化体細胞とES細胞のmRNAレベルにおける遺伝子発現プロファイルが大きく異なることが明らかとなっている。私達は、ES細胞と体細胞のタンパク質プロファイルの違いを明らかにするために2次元電気泳動と質量分析計を組み合わせたプロテオーム解析を行った。 マウスES細胞と体細胞(3T3細胞)を、それぞれ培養し、タンパク質を抽出した。両者の泳動像には幾つかの相違点が見られたが、プロファイルは、いずれも典型的な分裂可能な培養細胞に類似しており、両者に大きな違いはなかった。 ES細胞を特徴づける遺伝子産物は、転写因子などの遺伝子発現調節を担うタンパク質であることが知られているが、これらのタンパク質の細胞内での存在量はごくわずかである。対象となるタンパク質を核内タンパク質及びDNA結合タンパク質に絞り込むfocused proteomics解析を実施した。核タンパク質を抽出し、SNF2H及びSTAT3などの核タンパク質に対する抗体を用いて、抽出されたタンパク質についてウエスタン解析を行い、核タンパク質が濃縮されていることを確認した。得られた核タンパク質画分を、DNA-Sepharoseカラム、及び histon H3/4 tail domainペプチド固定化カラムの2つのカラムで分画し、それぞれを得られた結合画分を電気泳動法により分離した。その結果、ES細胞と3T3細胞で濃度の異なるバンドが多数確認された。これらのバンドに含まれるタンパク質について質量分析を行い、ES細胞に特徴的なタンパク質を多数同定することに成功した。

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© 2005 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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