日本繁殖生物学会 講演要旨集
第114回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR-35
会議情報

臨床・応用技術
最少容量ガラス化法と急速融解によるクライオチューブを用いたラット1細胞期胚ガラス化保存法の開発
福田 康義東谷 美沙子小畑 孝弘矢野 愛美及川 剛宗川辺 敏晃尾野 恭一岡本 洋介西島 和俊*関 信輔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】ゲノム編集技術の開発により,簡便にゲノム編集動物作出が可能になった。そこで,CRISPR/Cas9システムを導入するための哺乳類1細胞期胚のガラス化保存法の開発が望まれる。しかし,新鮮胚同様の高い発生率を示すラット1細胞期胚ガラス化保存法の報告は高価なクライオトップを用いた方法に限られている。これまでの研究により,我々はガラス化保存の成功には急速冷却よりも急速融解が重要であることを示している。そこで,急速融解に着目し,クライオチューブを用いたラット1細胞期胚ガラス化保存法の開発を行った。【方法】ガラス化溶液には,エチレングリコール(EG, 10% v/v),フィコール(27% w/v),0.45 M スクロース添加PB1液であるEFS10を用いた。5%EG液で前処理(23℃, 10分間)し,EFS10に40秒間浸している間に,胚を含むガラス化溶液(5 μl)をクライオチューブに入れ,液体窒素に直接浸すことでガラス化保存した。融解は,室温で1分間静置し,それぞれの温度(25,37あるいは50℃)の0.3 M スクロース液1 mlを添加することで,それぞれの速度(0.47秒,0.35秒あるいは0.16秒)で融解した。融解後,体外培養による胚盤胞期への発生率あるいは1細胞期での胚移植による産仔率により発生能を確認した。【結果】体外培養による無処理の胚の胚盤胞期までの発生率(51.9%)と比較して,25℃あるいは37℃のスクロース液での融解(0.47秒あるいは0.35秒)では,胚盤胞期胚への発生率(11.9–12.1%)は低かった。しかし,50℃のスクロース液を用いた急速な融解(0.16秒)では,無処理の胚と同様の胚盤胞期への高い発生率(58.1%)を示した。そして,急速融解した胚を仮親へ移植したところ,無処理の胚の産仔率(48.6%)と同様の産仔率(50.0%)で正常な産仔を得ることができた。急速融解に着目することでクライオチューブを用いたラット1細胞期胚ガラス化保存法の開発に成功した。

著者関連情報
© 2021 公益社団法人 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top