日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-1
会議情報

ポスター発表
エストロジェン受容体α非翻訳領域遺伝子改変マウスの学習記憶不全と遺伝子発現プロファイル解析
*原 唯香平舘 裕希原 健士朗北嶋 聡菅野 純種村 健太郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】生殖内分泌系への作用とともに,中枢神経系へのエストロジェン受容体α(ERα)シグナルの作用として,神経突起伸長調節機能,学習記憶機能,神経保護機能への作用が数多く報告されており,さらにERαシグナルの異常は幾つかの精神/神経疾患との関連が疑われている。しかし,ERα欠損マウスは完全不妊かつ重度の肥満となることから,行動解析による脳高次機能影響解析が困難であった。そこで,本研究ではERαの発現制御に関わるとされるERα非翻訳領域に着目し,その遺伝子改変マウスを用いた行動解析からERαの発現制御異常による脳高次機能影響を解析することを目的とした。【方法】生後約12週齢の雄ERα非翻訳領域遺伝子改変マウスについて,脳におけるERαタンパク発現量をウエスタンブロット法によって検討した。さらに自発活動量を測定するオープンフィールド試験,不安関連行動を測定する明暗往来試験,学習および記憶能力を評価する条件付け学習記憶試験を行った。また,行動解析後のERα非翻訳領域遺伝子改変マウス海馬について,網羅的遺伝子発現解析を行った。【結果】生後12週齢のERα非翻訳領域遺伝子改変マウスの脳におけるERαタンパク発現量をウエスタンブロット法によって検討した結果,野生型マウスの約1/5の発現量であった。即ち,本マウスはERαノックダウンマウスと考えられた。また,オープンフィールド試験および明暗往来試験の結果,同腹の野生型マウスとERα非翻訳領域遺伝子改変マウスの自発活動量および不安関連行動において有意な差は認められなかったが,条件付け学習記憶試験から空間-連想記憶能の低下を示唆するすくみ行動率への影響が認められた。よってERα発現低下によって学習記憶不全が誘発されると推察された。また遺伝子発現解析結果に基づくパスウェイ解析から,本マウスは,特に認知症や統合失調症との相関を示唆する遺伝子発現様式を示すことが判明した。

著者関連情報
© 2020 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top